最後まで甲府は強固な守備ブロックを保ったまま、広島の前に立ちはだかった。
ピーター・ウタカを最前線に置く広島は個の力を押し出して試合を進めたが、頼みのウタカがタイトなマークを受けて局面を打開できず、両翼のミキッチと柏は徹底的に縦への突破だけ防がれた。無論、甲府が守備を固めてくるのは戦前から分かっていたこと。「個の力が必要になってくる。彼のシュート力を生かせれば」と森保監督は期待してアンデルソン・ロペスを先発起用したが、ブラジル人アタッカーはスペースを消されて左足を振り抜くことができない。
前半、甲府は広島の攻撃をシュート2本に抑える見事な守備を見せただけでなく、攻め急がずポゼッションに努めて効率良く試合を進めた。「自分たちでボールを動かす時間を増やして、広島の攻撃のパワーを削ぎたかった」。試合後に佐久間監督が語ったとおり、落ち着いてパスを回して時間を過ごし、広島とポゼッションを互角に持ち込んだことが、最後まで集中力が途切れなかった要因の一つだろう。
後半に入ると森保監督は塩谷、佐藤と交代カードを切ってリスクを負ってでもゴールをこじ開けに出たが、甲府はこの機を狙っていた。佐藤の投入から5分後、広島が2トップへシステムを変更した成果を挙げる前に甲府がCKから先制点を挙げると、その後は甲府守備陣が広島の慣れないパワープレーを難なくはね返して完封を完成させた。
「ひさびさに現場の仕事をやって約1年半だが、今日の勝利は心からうれしい」と佐久間監督は会心の勝利を喜ぶ。甲府は年間勝点16位の名古屋に7差をつけ、J1残留に向けての大きな一歩を踏み出した。(寺田 弘幸)