変化に対応できなければいけない
―7月26日に就任が発表された篠田監督ですが、チームが低迷する苦しい中での、監督就任でした。
「あっという間に数週間が経っていきましたね。ここまでは選手たちにプレーの責任と試合に向かう姿勢といった、シンプルなことを思い出させるために注いできた期間だったと思います。これまで自分がコーチとしてチームに携わってきた中で、今季は選手たちも少し迷いながらプレーしている、自信なさげに怖がりながらプレーしているとは感じていました。もちろん監督が代われば、戦い方も変わるのがサッカーです。城福さん(城福浩前監督)が今季から監督になって、選手たちにとっては新鮮な部分もあったけれど、なかなかスムーズに物事が進まなかったのも確かです。ただ、ポポさん(ランコ・ポポヴィッチ元監督)やマッシモさん(マッシモ・フィッカデンティ現鳥栖監督)の時代もそういう時期はあったし、勝ち切れなかったり、すっきりしないまま試合が終わっていくというときもありました。でも、やることがはっきりすると、だんだん勝ち点を積み重ねられるようになり、自信も付いてくる。今季はその流れをなかなか作ることができませんでした。そこが苦しいところだったと思います」
―福岡時代同様に、今回の監督就任も急転直下の出来事でした。自分の中で、どう決断したのですか?
「本当に考える時間がありませんでした。チームもリーグ戦を戦っている最中で、即答するしかありませんでした。あれこれ考えてやるかやらないか迷うよりも、チームが停滞しているのは事実でしたし、選手のテンションの落ち具合もありましたので、彼らをもう一度押し上げたいという一心でした。僕が監督になって特別何かをしてあげようとかではなく、下がったチームの士気をとにかく上げなくてはいけないという使命感でしたね」
―例えばACL(ラウンド16第2戦・上海上港戦)ではアウェイの舞台で終了間際にロスタイム弾を浴びて敗退してしまうなど、今季はリーグ戦を含めてショッキングな負け方が多かったという印象です。
「そうですね。特にリーグ戦で流れが良くない中でも、ACLを勝ち進んでいくことでチームは持ちこたえていました。そこでベスト8の道が閉ざされたことで、チームのテンションも落ちていったところもありました」
―コーチという立場ではできなかった役割が、監督では求められます。ここからのチームや選手へのアプローチをどう考えていますか?
「一つ言えることは、選手が一番誰を見ているかといえば、それは間違いなく監督だということです。監督がどんな行動や態度を取って、何を発言するか。それに対して選手はとても敏感です。もちろんコーチの指示も選手の耳には入りますが、一番は監督が何を伝えるかが大事になります。(選手に)近付くこともあれば、突き放すこともある。そこの距離感を選手は気にしています。負けたあともそうだし、勝ったあともそう。その敏感な部分を常に意識したいです」
―監督就任後、一番意識して変化させたことは何ですか?
「思い切ったプレーをすることです。チームプレーももちろん大事ですが、自分が持っている能力を前面に出せているかということを選手たちには強調しました。たとえミスをしても、チャレンジしているかどうかが重要だと思います。それによってチームは活性化しますし、良い方向に行けば集団としても個人としても達成感を得られる。そこを一番意識しながら、練習メニューを考えたり、声掛けをしたりしています」
―選手たちは今季、チームの戦い方や自分の役割のところで少し混乱していたようにも見えました。篠田監督はそのあたりをまずはシンプルにしようとしました。
「僕自身の攻守においての考え方がすごくシンプルなんだと思います。例えば、監督やコーチがすべて『こうしろ、ああしろ』と言ってチームがプレーすることはできません。ピッチの中では常に変化が起きるし、しかもそこでは思考のスピードも問われます。変化に対応できるチームや選手でなければいけない。先日負けてしまった神戸戦(2nd第8節・1●4)で言えば、後半になって相手にスペースを与え出した時点で、どこでもう一度守備のブロックを作るのかなどを、自分たちで判断して試合を作っていくところがまだまだできていませんでした。監督として、その対応力を選手に付けていってもらいたいと思っています。それは試合を重ねていけば身に付いてくるものでもあります。自分が監督になってからは、最初は勢いで勝ったみたいなところがあって、でもその後は相手に逆転されて負けたりと課題も出てきています。これをきちんと次につなげられるようにすれば、チームは成長していく。もちろん全部勝てるに越したことはないですが、負けたあとが大事だと思います」
―選手の特長を出してほしいと話していましたが、分かりやすい変化で言えば、これまで主にサイドでプレーしていた東選手をトップ下に、2トップの一角に入っていたムリキ選手を左サイドのアタッカーにそれぞれ移しました。彼らの本職の位置でもあります。
「(東)慶悟は今季はワイドの位置でプレーしていましたが、僕が思う彼のベストポジションはトップ下だと見ています。ムリキもサイドでは守備のところで少し弱さも出ますが、それ以上に彼の攻撃力を重視すると、いまのポジションが適任だと思います。彼らの最大値を出させることが、当然チームにとっても一番力になることだと考えました。さらに本人たちもそのほうが気持ち良くプレーができるところもあるので、システムも変えました。実際に攻撃に関しては、彼らを含めて前線の選手は良いパフォーマンスを見せてくれています」
②につづく