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[六川 則夫]欧州組の経験だけでは勝てない/W杯アジア最終予選タイ戦クロスレビュー

2016/9/5 6:00


Photo: Norio Rokukawa
痛感した柏木の存在感

 最終予選初戦、ホーム埼スタでまさかの敗戦。とはいえ、『まだ全体の10分の1を消化した時点での勝ち点ゼロを、悲観的に捉える必要はない』。その意見に与したいのはやまやまだが、あまりにも日本の内容が悪過ぎた。現状のスタイルを続ける限り、この敗戦が残り9試合に与える影響は大きいと言わざるを得ない。ここで失った勝ち点3以上に、これから日本を待ち受ける対戦相手に、日本チームの欠陥がはからずも明らかになってしまった。
 何よりも手の内を見せた総力戦をしかけて、追い付くことすらできなかったのが痛い。本田圭佑がセットプレーから消える動きで、ファーサイドから先制点を奪ったにもかかわらず、日本チームはそれを忘れてしまったかのような、単調な攻撃を繰り返した。やはり、柏木陽介の不在は予想以上に大きかった。「ここでサイドチェンジだろう」。撮影しているゴール裏で何回叫んだだろうか。
 後半まず交代すべきは、狭いエリアでのプレーにこだわる香川真司だった。清武弘嗣をトップ下に置き、サイドを活性化させ、長身のDFアハメドの頭を越えたところで勝負をすれば、違った光景が見えてきたはずだ。セットプレーでは、ベンチ要員も含めて空中戦で存在感を発揮するのがCBの吉田麻也だけしかいなのも懸念材料だ。サイドからのクロスも相変わらず精度が悪い。酒井宏樹は全体練習後、監督から個人レクチャーを受けていたが、その成果はピッチで生かされなかった。

駆け引きでも劣っていた

 ゴールと思われた浅野拓磨のシュートに対する副審の判断も含め、アジアの審判の資質が問われた試合でもあったが、明らかなミスジャッジは、UAEの同点ゴールとなったハリルに対するFKの判定だけだった。
 いまや、ホームだからと言って、日本側に有利に笛が吹かれることはない。吉田に対する警告は抗議に対するものだし、酒井宏樹は相手に手を出した。極め付きは大島僚太が与えたPKである。明らかに抜けた相手に足を引っ掛けていた。悔しいかな、カタール人の主審は、そのときだけはよく見ていた。立ち上がり、試合の流れを見れば、彼はコンタクトプレーに対し、マニュアルどおりの笛を吹いていた。このレベルの審判団が最終予選で笛を吹くのはAFCの問題だが、問題は、選手がそのことを理解して、UAEのPKを獲得したイスマイール・アルハマディのような、笛を誘うプレーができなかったところにある。
 決定力のみならず、駆け引きでも相手に劣っていた。もはや欧州組の経験値だけではアジアでも勝てない。(六川 則夫)

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