Photo: Norio Rokukawa
実力差が結果に表れにくい時代に突入
日本がアジアの強豪であることに変わりはないが、差はずいぶん縮まっている。今年のEUROでもウェールズやポーランドが優勝していても不思議ではない状況になっていた。ドイツやフランスなどが強豪であることに変わりはないが、常に勝てるような状況ではない。もともとサッカーは実力の差が結果として表れにくい。点が入りにくいからだ。
技術の高さという実力差を結果に結び付けて一時代を築いたスペインの3連覇はあえなく阻止され、欧州はロースコア基調の、番狂わせが生じやすい時代に戻った。アジアがそこまで群雄割拠状態になるとは思わないが、傾向は似ている。かつては守備ブロック共通の弱点だった“間受け”と“ニアゾーン”。そこを消す要領が良くなり、技術を封じられるようになった。技術の優位がスコアに反映されにくくなり、ロースコア化し、判定やコンディションや些細なミスが結果を左右する。これまでの日本は多少の不運に見舞われても勝ってきたが、もうそこまでの実力差はない。
守備が進歩したのなら、それを上回る攻撃力を示せばいいわけだが、あいにくEUROでもコパ・アメリカでもそれに成功したチームはなかった。日本のフィニッシュにおける効率の悪さを考えると、よけいにハードルは高そうだ。技術が高くボールを支配できること自体は長所である。しかし、それを得点に結び付けにくくなっていて、虎視眈々とカウンターを狙う側に追い風が吹いている。
この状況で日本にできるのは、相手が掲げている『堅守速攻』の看板から“速攻”を奪ってしまうことだ。点が取れないなら、相手にはそれ以上にチャンスを与えない。相対的に少ないはずの相手のチャンスをさらに無効化してゼロに近付ける。堅守をこじ開けるのではなく速攻を奪うためには、自分たちの攻撃力を少し落とさなければならないかもしれないが、攻撃力を打ち消し合って残るものがあるのは日本のほうだろう。
相手を分析してメインの攻撃ルートをつぶす、攻撃しているときも逆襲に備えて中盤は空けない、カウンターリスクの高い中央突破に固執しない、ボールを保持しながら慎重に丁寧に戦う。場合によっては相手にボールを持たせてもいい。差は詰まっているが、僅差はある。その差を確実に結果に反映させるのが今予選のテーマになりそうだ。(西部 謙司)