不格好な勝ち方だったかもしれない。まだまだ状況は苦しく、順位が上がったわけでもない。それでも全員が前を向いてつかんだ19試合ぶりの1勝だった。この日の主役・闘莉王も「よく勝てたなと思う」と苦笑しながら、粘り勝ったチームの確かなエネルギーを感じ取っていた。「自分には今日が終わって6試合しか残っていないし、過去は直せない。ただ、残りの試合に向けて、サポーターからの熱いビデオもあったりして『全員で勝とうじゃないか。一個一個、一試合一試合を必死にやろうじゃないか』と話をして、みんながよくついてきてくれた」(闘莉王)。
残留争いのライバルとの“決戦”を前に、サポーターの熱い思いが届く。試合2日前のミーティングでクラブから見せられたのは、サポーターからのメッセージ映像。ボスコ・ジュロヴスキー監督は「彼らは愛だけで支えてくれている。戦うんだ。最後まで悔いの残る戦いだけはするな!」と鼓舞した。クラブは赤字覚悟で910円の弾丸バスツアーを用意し、史上初めて社員専用の弾丸バスツアーも敢行。この日、そして奇跡に向けた残り試合に向け、“全員”で戦っていた。
試合当日、アウェイビジター席には約1,200人が集まった。優勝争いを演じた10年のアウェイ・新潟戦(約800人)を大きく上回る数のサポ−ターが、新潟まで足を運び、選手バスを出迎え、最後の最後まで声を枯らしていた。勝利の瞬間、名古屋に関わる誰もが声を上げ、立ちっぱなしだったベンチの選手たちは指揮官と抱擁。そして主将として誰より責任と苦悩を感じていた田口は、思わず涙をこぼした。「苦しい状況だけど、それでもサポーターは前を向いて僕たちをあと押ししてくれる。その思いがすごく伝わったし、今日もたくさん来てくれていた。もちろん一つ勝っただけだけど、それになかなか応えられなかった中でようやくの1勝。みんなが強い気持ちを持って臨めた」(田口)。
クラブ、現場、そしてサポーター。勝利の背景には、特大のあと押しと一体感があった。(村本 裕太)