あるとき、篠田監督が9月17日のJ1・2nd第12節・浦和戦(1●3)を振り返ったことがあった。「まあ、僕にとってはあのやり方が正解なんです。きっと次もアグレッシブに向かって行くと思います」
その言葉には悔しさだけでなく、1●3というスコアからは見えない手ごたえも隠れていた。
ここ数年の浦和戦は接戦ばかりだ。マッシモ・フィッカデンティ元監督(現・鳥栖監督)が率いた過去2年のチームは、アウェイ・埼玉スタジアムではイタリア人指揮官らしく入念な守備戦術の下に、相手と鏡合わせの布陣となる“ミラーゲーム”を演じたが、最後は相手に上回られた。一方、ホーム・味スタでは浦和の攻撃力に真っ向からぶつかりに行き、14年は4△4、15年は3●4と殴り合いを演じてみせた。
今季のJ1・1stの対戦では、城福浩前監督が基本布陣であった[4-4-2]で浦和と向かい合いながらも、スペースを消す組織的な守備と素早い速攻で対抗。一時は2点のリードを奪ったが、攻守で効いていたネイサン・バーンズの交代を機にリズムが一気に崩れて3失点の自滅。浦和のような特徴的な戦い方に対して、FC東京は鏡合わせにして相手の動きをハメ込んでも、守備偏重に戦っても、結局勝利には届かなかった。
過去の惜敗を、コーチとして味わってきた篠田監督。指揮官に昇格し、浦和と相対したときに採ったのは、猛烈なハイプレッシングを敢行する勇ましい策だった。
「実は福岡の監督時代、地理的に近かったのでよくミシャ(ペトロヴィッチ監督)がいた広島と練習試合をしていた。そのときから、とにかく相手DFまでプレスを掛けるやり方で結構勝っていた」(篠田監督)
ここに、あるデータが存在する。9月の対戦で相手に圧力を掛け続けた東。ただでさえ運動量豊富な彼だが、篠田監督就任後のリーグ戦9試合の中でも、浦和戦のスプリント回数がダントツで多かったのである。
「ガンガン、プレスを掛けてパスを下げさせろ! G Kにボールを持たせて、ゲームメークさせるんだ!」
これは大げさな指示ではなく、受けに回らずに浦和を倒すための、指揮官・篠田善之の正攻法だったのである。
再びやってきた浦和戦。前回は後半早々に先制するとすぐにミラーゲームに切り替え、受けに回ったところでまたしても逆転負けとなってしまった。「あの積極的な時間をいかに90分に近付けられるか。相手に合わせるのではない。自分たちが何をできるか」。鼻息荒い篠田監督とFC東京。念願の白星に向けて――。勝機を見出すには、相手に噛み付いていくしかない。(西川 結城)