Photo: Norio Rokukawa
目の前にあったかつてない光景
韓国や豪州を除いて、アジアの相手にこれほど押し込まれた試合はあまり記憶にない。これまで中東相手の苦戦といえば、攻めても攻めても得点できず、逆にカウンターから失点というパターンばかりだったが、イラク戦は本当に危険な場面の連続だった。
ヴァイッド・ハリルホジッチ監督がいつも言うように、日本の選手はデュエルに弱い。そんなことは、ずっと前から分かっていたことだ。だからこそ、歴代監督は集団で戦うことを選択してきた。空中戦で競り負けるならクロスを入れさせないように守り、セカンドボールを拾うために頑張る。そして、攻撃面では味方同士がサポートし合ってパスをつないで攻める…。
そして、そのためには選手間の距離を短く保つことが必要だった。岡田武史は「接近、展開、連続」という言葉を使ったし、イビチャ・オシムが「日本のサッカーを日本化する」と言ったのも、同じようなことだった。だが、現在の代表はまったく違う方向に進んでいるように思える。
捨ててしまったストロングポイント
イラク戦でも、試合開始直後から選手間の距離は離れ、最終ラインから最前線まではざっと40〜50mの距離があった。本田圭佑は右に張り付き、原口元気も左に固定され、必然的に選手間の距離は遠くなり、各選手は孤立した。攻撃は長いボールでSBを走らせるか、本田や清武弘嗣への縦のボールに頼ることとなった。
その結果、パスを受けた選手は孤立して1対1の勝負をしかけざるを得なくなる。だが、イラクはアジアでも有数の球際の強さを誇る国だ。「デュエルが弱い」日本選手がそう簡単に勝てないのは必然のことだった。オープンスペースが増えれば、逆にイラクはやりやすくなる。つまり、日本は自らのストロングポイントをあえて捨てて、相手の土俵で戦っていたのだ。
だが、ハリルホジッチ監督は選手のコンディションや試合勘を嘆くことはあっても、戦術的問題とは考えていないようだ。“デュエルに弱いから集団的に戦う”のではなく、“デュエルに弱いなら、強くなればいい”と考えているのだろう。
もちろん、デュエルに強くなることは悪いことではない。だが、そういうアプローチだけで勝っていけるのだろうか?「日本のサッカーを日本化する」のではなく、「日本のサッカーを欧州化する」。どうやら、それがハリルホジッチ監督の哲学のようである。