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[六川 則夫]浮かび上がった時間軸のズレ/W杯アジア最終予選クロスレビュー③

2016/10/10 6:01


Photo: Norio Rokukawa
現状のベストメンバーだったが…

 2-1が逆のスコアであっても、まったくおかしくないホームのイラク戦だった。イラクはリオ五輪に出場したチームをベースにしているだけに、若手主体ながらUAE以上にチームの完成度は高かった。楽観的に考えるなら、そのイラクを、土壇場で突き放した日本の底力をこそ、本当は評価すべきなのかもしれない。しかし、日本は身のほどを知るべきだ。
 イラク戦の先発メンバーは、現状で考え得るベストを選んだと筆者は見ている。長いW杯アジア最終予選を考えた場合、岡崎慎司、本田圭佑はこれまでの実績を踏まえ先発させることで、モチベーションを上げていかなければならなかった。トップ下の清武弘嗣、左の原口元気は、これからの代表を押し進める原動力となる重要なピースである。長谷部誠、柏木陽介の二人は、ホームではベストマッチングのボランチと言っていいだろう。GKを含めたDF陣の5枚は、これまでの流れから、あえて代える必然性は考えられない。途中出場となった浅野拓磨、小林悠、山口蛍は、後半からのオプションとしても十分戦える選手たちだ。
 日本は26分に原口のゴールで先制したことで、理想的な展開になるかと思われた。しかし、ここで畳み掛けるような二の手、三の手が続かない。それが、1回のみならずUAE戦に続いて2回も、ホームで繰り返されたとなると、日本代表が抱える切実な問題が、そこに横たわっていると言わざるを得ない。

中軸選手たちの経年劣化

 ヴァイッド・ハリルホジッチ監督が求めるサッカーと、長年にわたって日本代表で実績を残してきた選手たちとの齟齬が大きくなってしまった。その最大の理由は、当事者である選手らの経年劣化である。
 いまの欧州サッカーの潮流を原点とする監督は、当然のごとく“欧州組”を重用するが、彼ら自体が歳を重ねながら試合からも遠ざかっていることで、球際での決定力を体現できていない。吉田麻也が普通に試合に出ていれば、セットプレーで点が取れていいはずだが、いまや枠をとらえることも稀である。過去、セットプレーは日本の数少ない得点パターンだったが、逆に、いまや最大の失点パターンとなっている。
 ハリルホジッチ監督は欧州組をベースにチームの土台を作ってきたが、時間軸のズレだけはどうしようもない。武藤嘉紀、大迫勇也らほかの欧州組に加え、彼の求めるサッカーにふさわしい選手は非欧州組にもいる。試合後、選手・スタッフ全員で、集合写真に収まっている場合ではない。

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