Photo: Atsushi Tokumaru
プランどおりに運んでいたゲームが急きょ暗転し、岡山は窮地に立たされた。52分に渡邊が2回目の警告を受けて今季初めて数的不利に陥ることとなったが、チームは決して動じることはなかった。勝ち点1を手にしてアルウィンをあとにしたチームのたくましさに感嘆させられたが、同時に勝ち越しまではいけない非力さも感じさせられた。
岡山の懐の深さを見せたゲームだった。どんな苦境でもあきらめない精神力の強さはもちろん、その状況に応じて勝機を見いだす手段を共有し、冷静に実行に移す力を岡山は有している。試合後、長澤監督は「勝負どころがいつ来るかということを全体で調整しながらやっていた」と選手たちを称賛し、岩政は「相手の攻撃はそんなに多彩ではないので、体を張っていれば時間は経過していくと思っていた」と振り返る。数的不利になって10分後に先制を許したが、それでも反撃に出るタイミングを辛抱強く待ち、指揮官の思い切った采配をスイッチにして攻勢をかけた。「活きの良い二人(豊川と藤本)と(矢島)慎也が絡めばチャンスは作れると思っていたので、とにかく0-1でいくことを考えていた」(岩政)。最終ラインは冷静さを保ちながら前に出ていく選手を増やしていき、ついに87分、セットプレーから千載一遇のチャンスをモノにする。岡山は10人での戦いを強いられながらも、見事に勝ち点1を奪取した。
しかし、同点止まりで終わったことが悔やまれる。試合の流れを手繰り寄せて終了間際には逆転のチャンスを創出したが、藤本のシュートはゴールマウスを捉えず、「ああいうところが決まってくると、またチームとして一歩上に行けるんだろうなという感覚がある」と矢島が語ったように、上へ駆け上がるビッグチャンスをつかむことはできなかった。堅実さに秀でて高い総合力を有す岡山は、どんな試合でも勝機を見いだす力を付けてきた。しかし、それだけでは足りない。J1初昇格という大事を成し遂げるためには、説明することの難しい“爆発的な力”が必要だ。岡山はまだその力を手にできていない。(寺田 弘幸)