ネイマールとの対戦で再確認した積極姿勢
''青赤の、背番号39。中島翔哉が、急速にFC東京での存在感を高めてきている。今夏、リオ五輪に出場し、日本と東京を代表して世界と渡り合ったアタッカー。彼の本質は、誰よりも真っ直ぐで、誰よりも純粋だ。「サッカー選手として、僕はすごくシンプルな考えの人間だと思います」
その思いを、ストレートに語ってくれた。''
――五輪後、プレーの意識が変わったように見えます。
「よく言われるのですが、実は五輪によって変わったという意識はまったくありません。ただ、五輪で海外のチームと対戦した経験が大きかったのは間違いないです。特に親善試合でしたけれど、ブラジル戦は自分にとって大きかった。自分がしたいプレーを、そこで再確認できたというか。確かに年々、やれることは増えていると思います。でも昨年、そして今年の前半戦はJ1の試合にあまり出られなかった。そこで少し迷ったりしたところがありました。試合に出たときに、ボールを奪われないように意識し過ぎて、前に行くプレーができていなかった。ブラジル戦で対峙した、ネイマール選手は結構ミスをするし、ボールを奪われていたんですよ。それでも絶対に前にしかプレーしていなかった。その自信あるプレーは自分も真似すべきだと思いました」
――中島選手は普段から海外の選手のプレーを見て熱心に勉強していると聞きました。
「試合の映像を見るのは、自分のルーティーンワークにしていることでもあります。いまの自分に足りない部分を持っているのは、スアレス選手(バルセロナ/ウルグアイ代表)。ゴールに向かう力強さがすごい。スピードはそこまで速い選手ではないと思います。技術もメッシ選手やネイマール選手に比べたらそこまでない。けれどもゴールに向かう姿勢、どん欲さというのは世界でもトップ。絶対に前を向いて、シュートまで持っていこうとする。そこは自分にもっと必要な部分でもあります。相手をなぎ倒してでもゴールに向かう。そういうプレーをもっとできるようにしたいです。
僕はいろいろな選手の良いとこ取りができれば良いと考えています。ネイマール選手だったら、ミスをしても気にせずに仕掛ける自信。メッシ選手は身体能力が高いので別格ですが、でも盗めるところもある。誰かというよりは、いろいろな選手の良いところを自分のモノにできるように。そういうイメージでいますね」
――球際の勝負、日本代表のヴァイッド・ハリルホジッチ監督の言葉で言うデュエルを積極的にしかけていくプレーが印象的です。また香川真司選手のスラロームのようなドリブルよりは、DFとの球際でも力強く勝っていって推進していく突破が際立ちます。
「理想は、ゴールに向かってまっすぐ、トップスピードでしかけていくことです。相手がいるとどうしても遠回りになったりプレーが遅くなったりすることもあった。それが今までの自分だったと思います。ただ、トップスピードで向かったら、相手も怖い。そのぶん、本気の全力ダッシュでドリブルができるように体を鍛えないといけないです。試合だとなかなか難しいところではありますが、そこを目指してトレーニングしています」
――中島選手はあくまで日本ではなく海外のスタンダードを意識してプレーしていますね。
「五輪を経験して、そこで対戦したチームと比較すると、日本は守備において相手のミスを待つスタイルが多いという印象があります。自分も含めて、まだまだ相手ボールを奪いに行けていない。自分のプレー映像を見ていて『奪いに行けよ!』と声に出してしまうぐらいですから。そこは本当に変えたい部分ですし、逆に言うとスアレス選手は前からスライディングしてでも奪いに行く。そこも真似する必要がある。優先順位としては前から、ですね。戻るのは、攻め込まれてからでいい。ただ、ボールは奪いに行かないといけません」
――FC東京では、篠田善之監督になって攻守で積極的に前に行くサッカーを目指すようになりました。中島選手のプレーとの相性も良いのでは?
「個人的なプレーはまだまだ満足はできないです。守備の部分でも、もっとボールを奪えると思います。攻撃はスピードや力強さが足りない。ゴールのパターンももっと増やしていかないといけないですね」
――ルヴァンカップ準決勝第2戦、ゴールを挙げましたが、自分でドリブルでしかけてシュートする形ではなく、相手の裏のスペースに抜けてシュートする形でした。あのようなパターンもどんどん見たいですね。
「パスの受け手になってゴールを狙うプレーはこれからの自分にとっては大事だと思います。もちろんゴール前に入っていって、クロスに合わせて決めるプレーもどんどんやっていきたい。逆に自分がクロスを上げて、アシストもしたい。本当にまだまだやるべきプレーは多いですね」
――いま、チームの中で徐々に存在感が高まっています。
「僕は物事をシンプルに考える方なので、変に気負うよりも、毎試合1点でも多く取りたい。それを追い求めていった結果、チームに貢献できれば良いと考えています。良く言えば自分磨き、悪く言えば自分本意なのかもしれないけれど(笑)、でも海外のトッププレーヤーはみんなそうだと聞きますし、実際に五輪でもそうだなと感じました。特に攻撃の選手なので、そこに自分の基準を合わせていきたいですね。周りのみんなも僕がワガママだということを理解してくれています(笑)。プレーでも、自分が攻めたときに東選手は後ろをカバーしてくれる。僕のスタンスを受け入れてくれているのはすごく助かっています。もともと他人の指示をあまり聞かない性格ですので(笑)。特にサッカーにおいては、自分の考えを曲げないし、譲らないことが多いと思います」
――それは、自分は誰よりもしっかり考えを持っているというところからくる自信なのでしょうか?
「そうですね。他人の意見は聞いたほうが良いと思いますが(笑)。でもプロ選手は頑固な人たちの塊でもありますから。メッシ選手もネイマール選手もまずは自分のプレー、パスはその次の選択ですから。ボールを受けたら、前に運ぶ。ゴールに向かう。それが自分の役割ですし、チームから求められていることです。それを変えたら、チームのためにもならない。そう信じています。自分の理想とするプレーをやっていけば、自然と2点、3点と奪えるようになるという考えがあります。僕はやっぱりシューター、どこからでもゴールを狙うことが特長だと思いますし、強烈なシュートとドリブルはこれからも武器として持っていたいですね」
味の素スタジアムで中島を見られる幸せ
取材日の練習で、中島はファインゴールを決めていた。DFを背にしながらもうまく反転し、右足を振り抜く。カーブがかかった軌道は、美しい弧を描いてサイドネットへ。GKがまったく反応できない一撃。ロベルト・バッジョ選手やアレッサンドロ・デル・ピエロ選手さながらの一発だった。
しかし、中島の反応は冷静だった。
「まだまだスピードが足りない。あれは、DFに腕を引っ張られていたんですけれど、そこでも前に入っていけるようになりたい。途中で止められて、そこからシュートを狙うプレーは昔からできていたので。進化するためにはさらに深い位置に入っていくことを目指したい」
自分磨きが、チームのためになる。勝利に直結する。ここまで愚直に、シンプルに言ってのけることができる中島翔哉。このまま永遠のサッカー小僧でいられたら、あっぱれである。彼を、味の素スタジアムで目にすることができる価値――。日本人離れした心持ちのアタッカーは、いま、青赤が他所に自慢できる選手の一人と言っていい。
聞き手:西川 結城
中島 翔哉(なかじま・しょうや)1994年8月23日生まれ(22歳)。東京都八王子市出身。164cm/64kg。東京Vユース→東京V→FC東京→富山→FC東京。年代別の日本代表の常連で、リオ五輪では10番を背負い中心選手として活躍した。