前節・FC東京戦(1●2)、キックオフと同時にベンチの目の前の左サイドは完全に決壊していたが、石井監督はじっとして動かない。同サイドのファブリシオと山本は連係が取れず、前からプレッシャーに行く戦い方も、相手にはがされるばかり。それでも監督は修正を加えることも、選手を変えることもせず、自分が送り出した選手を信頼して耐えていた。
しかし、鹿島の信条は“臨機応変”。相手に合わせて戦い、相手のイヤがることを常に狙うことで、試合の流れをつかんできた。監督の指示がなくとも自分たちで試合の流れを読み、戦い方を変えていく。それが本来のあるべき姿と言えるだろう。
今節のメンバーに対する期待感が高いのも、その戦いを取り戻すことができそうなメンバーがそろったからだ。
これまで、走ってくる相手ならさらに走る。激しく球際を競ってくるならさらに激しく競る。そうしたことでしか勝機をつかめずにいた。そのため、相手に上回られると手も足も出なくなってしまうことも多く、戦い方の幅は非常に狭かった。
しかし、本来なら相手をいなし、走らせることも選択肢としてある。FC東京戦をベンチで見ていた中村充孝は「一度、下がってもよかった」と話し、西も「見ていて相手も読みやすいと思った」と違う選択肢を持っていた。リズムが一辺倒になりがちだった最近の試合からの脱却が期待される。
その臨機応変さをコントロールする中心が小笠原だ。前節は欠場したが、今節はピッチ中央で“采配”を振るうことになるだろう。チャンピオンシップの前哨戦とも言える一戦にも「一緒。関係ない」と一蹴。前節は、バラバラだった選手の距離感や戦い方を、その一声で統率する。(田中 滋)