Feature 特集

[愛媛]愛してやまない名将との別れ/それぞれのホーム最終戦

2016/11/23 5:00


 愛媛での最後の仕事を終え、最終戦セレモニーでマイクを握った木山監督はこみ上げる2年間の万感の思いから言葉を詰まらせ、その目からは涙がこぼれ落ちた。「自分にオファーをしてくれたこのクラブを必ず上位に引き上げようと全力で頑張ってきました」
 常に強気の姿勢を貫き、公の場でただの一度も見せることのなかった涙ぐむ表情こそが木山隆之の愛媛での2年間を表していた。
 木山監督が愛媛の指揮官に就任したのは昨季のこと。しかし、その年のチーム始動前にクラブの粉飾決算が発覚。チームを見る周囲からの目は厳しくなり、クラブ財政も火の車。火中の栗を拾った形となった波乱の船出だったが、強いリバウンドメンタリティーを備えていたこの指揮官はそんな逆境に負けるどころか、それさえもパワーに変えるようにチームをポジティブな空気で満たし、選手たちの意識を改革。「彼ら(選手)と一緒になって周りの人たちの評価を覆していけたら、こんなに楽しいことはない」
 開幕前に話した言葉は現実のものとなり、このシーズンの愛媛は大躍進。クラブ転覆の危機から一転してクラブ史上初のJ1昇格プレーオフへ進出した。今季は勝ち切れない試合が続いたが、それでもシーズンをとおして負けない粘り強さを見せ、2季連続のシーズン勝ち越しを成し遂げた。2年間を全力で駆け抜け、全身全霊をこのチームに捧げたからこそ、最後の瞬間にこみ上げる感情を抑え切ることができなかったに違いない。
 愛媛のファン、サポーターたちは下位が指定席だったチームを高みに導いたこの“名将”を当然のように愛してやまない。だからこそ、今季限りでの退任には肩を落としたが、それ以上に大きく上回ったのが感謝の気持ち。それを形に表すため、木山監督の顔をデザインしたビッグフラッグを急きょ多くのサポーターたちが集結して製作。ゴール裏で掲げたそのフラッグは涙でかすむ指揮官の目にもはっきりと映ったはずだ。“ありがとう、木山監督”。(松本 隆志)

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