■松本山雅FC
最後に与えられた“勝って終わるチャンス”
J1昇格プレーオフでの勝ち上がりを目指す松本。本来であればリーグ終了目前にして、自動昇格を手放すことになった悔しさは計り知れない。それでも大観衆はリーグ戦42試合の戦いぶりを評価し、最終節(横浜FC戦・3○2)の終了直後には熱い声援と拍手を送った。ならばチームは、その恩に結果を出すことで応えなければならない。すでに選手たちは残り2試合へと気持ちを切り替え、準備と調整に余念がない。
リーグで上位の松本は、引き分けでも決勝進出が決まる。その意味では圧倒的に優位な立場にいるが、一発勝負では何が起こっても不思議でないことは過去の歴史が証明している。だからこそ、松本に求められるのは、勝ちを狙う姿勢だ。「引き分けでいいとは言っても、事故は起こるもの。受け身にならずに勝ちにいかなければ」と話すのは工藤。京都時代にJ1昇格POを経験しているだけに、その言葉には説得力がある。町田戦(第41節・1●2)、横浜FC戦と入り方の悪い試合が続いているが、まずは受けて立つのではなく、序盤から積極的にしかけて主導権をつかみたい。
対戦相手となる岡山との今季の対戦成績は、1分1敗と勝ちなし。ホームでの対戦(第35節)は相手選手の退場により数的優位になってから先制し、最終盤までリードを保っていたものの、試合終了間際にセットプレーの流れから失点。悔しいドロー劇となった。今季リーグ戦で負け越して終わったのは岡山だけ。その意味で決して良い印象のある相手ではないが、逆に言えば最後に勝って終わるチャンスを得られたということになる。もし岡山が「松本、与しやすし」と考えているであれば、それは大きな誤り。昇格を望む大サポーターの思いとともに、雉に雷鳥の強さを見せ付けたい。(多岐 太宿)
■ファジアーノ岡山
失うものは何もない。積み上げたものをぶつける
岡山は16年を一つの集大成として挑んできた。シーズン最初のミーティングで長澤監督は「選手の構成を含めたクラブのビジョンがある中で、景色を変えるチャンスは今年しかない」と選手たちに伝え、チーム全員で覚悟を持って42試合を戦ってきた。
シーズン終盤に苦しんでギリギリでJ1プレーオフ出場権を手にすることになった事実は、それが今年のチームの実力だったと受け止めるほかない。ただ、今年の目標がJ1昇格PO出場ではなく、J1昇格であることに変わりはなく、「ここで二つ勝たないと意味はない」(伊藤)。J2昇格8年目で初のJ1昇格PO出場に達成感も満足感もなく、長澤監督は「いよいよ本当の戦いが始まる」とプレーオフをにらんでいる。
6位でJ1昇格POに出場する岡山にとって、失うものは何もない。これまでやってきたことを思い切りぶつけるだけだ。逆に言えば、「プレーオフは昨年から監督と選手とで積み上げてきた形が見える2試合になる」(岩政)。積み上げきたものしか表現することはできないだろう。
影山前監督から献身的でひたむきなスピリットを継承した長澤監督は、岩政が統率する強固な守備を土台にした上で、選手それぞれが個性を生かし合う環境を作り、試合の状況に柔軟に対応しながら戦うチームを作ってきた。勝利でしか決勝への道を開くことはできないが、だからと言ってやるべきことが変わるわけではない。「アウェイになるのでしっかりと粘り強く戦う自分たち本来の戦い方で臨む」(長澤監督)。まずは手堅く試合を運びながら勝負どころを見極めていきたいところだ。
「前に前に自信を持ってミスを恐れず戦いたいし、それが一番勝利に近い方法だと思う」と加地。岡山は自分たちのやってきたことに自信を持って戦い抜く。(寺田 弘幸)