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[特集・FC東京コラム]「手を抜く選手は絶対に使わない」/FC東京の2016シーズン

2016/12/9 6:00


Photo: Atsushi Tokumaru
 あるとき、森重が語った言葉が印象的だった。
「いまは本当にシンプルに戦うことができている。特徴的な戦術とかではないかもしれない。でも、ピッチに立つ選手全員がハードワークをした上で、個々の特徴を発揮しやすいチームになっている」
 端的に、篠田監督率いるFC東京を表現しているコメントだった。ポイントは、全員がハードワークすること。そして、選手が特徴を出せていること。ここに、指揮官の好マネジメントの秘訣が隠されている。
 12年からFC東京のコーチに就いて4年。篠田監督はここまで、多くの選手たちと近くで接してきた。「コーチの時代が長かったからか、起用に迷いがない。誰が、どこで、どんなプレーをしやすいのかが、分かっているのだと思う」。そう語ったのは東だった。城福体制から篠田体制になっての、ただ一つ大きな変化。それは、トップ下を配置したこと。これまでサイドで起用され窮屈なプレーに終始していた東を、篠田監督は本職に戻した。その結果、本人は水を得た魚のように蘇生し、チームも息を吹き返していったのだった。
 東を重用した篠田監督だったが、彼を特別扱いしたわけではない。毎試合、全力で相手に圧力を掛け、プレスバックもいとわない東だが、ある試合で途中まで敵を追ったものの、最後はマークを味方に受け渡した。結局、これが決定的なシュートまで持っていかれてしまった。ミーティングで篠田監督は東を叱責した。「いつも誰よりも相手を追う選手が、ここで止めるのはあり得ない。トップ下でも最後まで責任を持って追え!」。東にだけ向けられた言葉ではない。それは、攻撃の選手にも徹底した献身性を求めることを意味していた。ほかの選手の背筋が伸びたのは、言うまでもない。
 来季、大久保や永井など、攻撃のタレントが加入することが決定的だ。それでも篠田監督は言う。「誰であろうと、手を抜く選手は絶対に使わない」―。
 監督になっても周囲から「シノさん」と親しまれる好漢。誰よりも選手に近く、そして厳しい姿勢が、チームの好循環を生んでいる。(西川 結城)

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