Feature 特集

[その名を刻んだ男たち2016]vol.2 FW 13 高松 大樹(大分)/インタビュー①

2016/12/9 6:00


道を拓く者〜ミスター・トリニータが残したもの、そしてこれから〜

チームを優勝へと後押しするための引退発表

―今日がここでの練習の最終日でしたね。

「もう現役としてはここ(大分スポーツクラブ練習場)で練習できないんだなと思うと、寂しい気持ちでいっぱいです。最後は今まで練習していたことをかみ締めながら走っていました。グラウンド整備の方に対しても『いつもきれいにしていただいたおかげで良い練習場だったなあ』とか。僕が一番ここを走ったのではないでしょうか。毎日ここに来るのが当たり前だったので、きっとクラブハウスに来なくなってから、本格的に寂しくなるんでしょうね。新しい生活に慣れていくのも寂しい気がします。そういった現実は、引退を決めたときから覚悟していたし、誰もが通る道ですから、受け止めて、この先に踏み出していかないといけないですよね。でも、1月までは契約があるし、体も動かしたいのでちょくちょく出てこようかな(笑)」

―00年に高卒ルーキーとして加入した当時は、まだクラブハウスがなかったころでした。

「犬飼グラウンドでした。懐かしいです。街の中心部から車で1時間近く離れた、川沿いの何もない練習場を借りて練習していました。あれから大分県に良い環境や素晴らしいスタジアムを作っていただいて、本当に感謝しています。いまの若い選手たちにとってはクラブハウスがあるのは当たり前の状態かもしれないけれど、僕が入ったときは何もありませんでした。それだけトリニータが成長してきたということです」

―大分での一番の思い出は、やはり…。

「08年のナビスコカップ制覇(清水戦・2○0)です。大分にタイトルをもたらすことが目標だったので、それが果たせたことが何よりもうれしかったです。自分の中でのベストゴールを聞かれれば、やっぱりあのヘディングシュート(決勝戦で68分に金崎のクロスから決めた決勝点)だと答えます」

―現役最後のホームゲームとなった今季のJ3第29節・YS横浜戦(3○0)では、高松選手をピッチに立たせるために、チームメートたちが必死でセーフティーリードの状況を作りました。そしていざ入ったら、全員が前で手を広げている高松選手にボールを集めた。あれは感動的でしたね。あの一体感と勢いも、J3優勝を引き寄せた一因だと思うのですが。

「勢いが出るようにしたかったから、あのタイミング(ホーム最終戦前の11月8日)で引退を発表しようと思ったんです。みんなが『大樹さんのために』と言ってくれていた中で、僕にとっては僕のためだけではなくて、チームを優勝へと後押しするための引退発表でした。ぺー(三平)も言っていたけれど、最終節の鳥取戦(4○2)よりもホーム最終戦のほうが緊張したって。若手はもっと緊張していたし、申し訳ない部分もあったけど、うまくいって本当に良かったと思っています。栃木が負けて首位に立ったのは想定外でしたしね」

―まさにスターの引退にふさわしい幕引きでした。

「いやいや。でもこれからもみなさんの力で新しいスタープレーヤーを育て上げて、トリニータを盛り立てていただきたいです。日本代表にも送り出したいし、そういう選手がこの小さな地方クラブにいたら、地元は盛り上がります」

―スターという意味では、ストライカーはすごくキャッチーな存在ですよね。

「FWのゴールを決めるという役割は本当に分かりやすいです」

トリニータは不滅なのでまだまだ応援してください

―最近の若いストライカーたちを見ていて、感じることはありますか。

「日本人は真面目なので、もっと我を出すストライカーがいてもいいかなと思います。『ここに出してくれれば絶対にゴールを決めるから出せ』と強く要求する選手は、最近のFWでは岡崎慎司(レスター)と大迫勇也(ケルン)くらいでしょう。我が強いようでいて、チームのためにやっているのが見ていても分かるから、あの二人にはすごく可能性を感じます。昔と違って現代サッカーではFWは点を取るだけのポジションではありません。オールラウンダーでないとダメですよね」

―大分で言えば後藤優介選手は最近、ポストプレーもうまくなったのではありませんか?

「あとは自信を付けるだけだと思います。もともと高い能力は持っているので、これから経験を積んでもらいたいです。アイツも23歳だから、年齢的にA代表しかチャンスがないけれど、そこはあきらめずに目指してほしい。いまは現実的ではないようなことでも、どん欲に目指していかないとダメだと思うんです。この世界では今季は活躍したけれど次のシーズンは全然ダメだった、なんてこともよくある話。チャンスはあると思いますが、すべて自分次第です」

―若手ということでは、伊佐選手と吉平選手が天皇杯3回戦・清水戦(0●1)の試合中にベンチで高松選手にアドバイスをもらったことが大きかったと話していました。

「彼らがJ3でできていることが、あの試合ではできていませんでした。基本として前線からプレスを掛けるのは大事なんだけれど、二人はどんな状況でもプレッシャーに行っていたので、中盤が付いてこなくて、そこのギャップをずっと相手に使われていました。そうではなくて、後ろの合図で行くとか、セットする場面とのメリハリをつけていくことなどが大事です。相手がJ3の選手ならプレッシャーを掛ければミスを誘えますが、清水の選手にプレッシャーを掛けてもいなされて、落ち着いてボールを回されていました。『もっとチームとしてのバランスを考えて戦わないと、自分たちもキツいだけだよ』と話したんです。アイツらはイケイケになってしまうタイプだから、勢いも大事だけどやっぱり頭を使わないといけません」

―吉平選手などは、トリニータスクールでボールを蹴り始めたころ、高松選手がすでにスター選手として活躍していた年代です。そういう選手と同じピッチに立ったというのもすごいですよね。

「時代を感じます。僕は高卒でプロになった当初、自分は2、3年で終わる選手だと思っていたのに、17年間もピッチに立たせていただけました。本当にみなさんのおかげです。僕が引退したことで『一つの時代が終わった。俺も完全燃焼したよ』と言う古参のサポーターの方もいらっしゃいましたけど、いやいやトリニータは不滅なのでまだまだ応援してください(笑)」

―大分では、サッカーを知らない人でも高松選手のことは知っています。行く先々にサインが飾られています。

「17年もいたら、知らない人でも1回はサインしているかもしれません。ありがたいですし、早くまたそういう選手に出てきてほしいです。求心力のある存在がいるチームであってほしいです」

②へつづく…

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