Photo: © JFA
「点を取れれば勝てる」と考えるチームが多い中、「点を取らせなければ勝てる」と一致団結する鹿島の存在はかなり異色だ。球際で戦い、ピンチには体を投げ打って防ぐ。その徹底ぶりは天皇杯決勝でも見事だった。
しかし、“徹底した守備意識”だけが勝因ではないだろう。この10連戦が始まったチャンピオンシップ準決勝・川崎F戦(1●0)を前に、それまで獲得してきた『17』のタイトルすべてを知る鈴木満常務は、選手たちに次のように訴えかけた。
「こういう試合で勝つ確率を上げるには、小さなことを積み上げていくこと。それを確実にやれるチームが勝てる」
球際で戦うことも、体を投げ打ってゴールを守ることも“小さなこと”ではあるが、鹿島はこれまで無数にその“小さなこと”を積み上げてきた。
例えば、決勝点を決めたファブリシオ。ほかのクラブならすでに帰国してしまうブラジル人も多い中、練習から努力を惜しまず励んできたことが実を結んだ。
例えば、小笠原満男。円陣を組めば「スタメンの11人だけではなく、それ以外のメンバー、ベンチ外の選手が練習をしっかりやれているからクラブW杯もあそこまでいけたし、この天皇杯もここまで来ることができた」と、主将の立場から出場機会のない選手をねぎらう声をかけた。
積み上げるのは選手だけではない。通訳も、分析担当も、そのほかのクラブ職員も、それぞれの立場でチームが勝つために“小さなこと”を積んでいく。表彰式後の記念撮影では、チームマネージャーを退任する長石博之氏が天皇杯を掲げた。小笠原は「俺らがプレーできるのは、そういう影の目立たないところで努力している人たちのおかげ」と恩返しができたことを喜んでいたが、このクラブを象徴する場面だろう。
タイトルから離れても変わることなく“小さなこと”を積み上げてきたクラブの伝統に、チームの成長が加わった。金崎、西、遠藤、永木と脂がのった選手が多く、その下の世代も昌子、土居、植田、鈴木など粒ぞろい。たとえ柴崎が抜けても、来季はさらに戦力が上乗せされる。
リーグタイトルと天皇杯を勝ち獲ったのは07年シーズン以来。言わずと知れたリーグ3連覇が始まった年であるが、世界を知った鹿島が目指すのはさらにその先だ。(田中 滋)