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[敗れ去りし者たちの物語]【一条】主将を晴れ舞台に立たせるために/高校サッカー選手権 特集

2017/1/9 16:41


Photo:Norio Rokukawa
 市立高校であるため、受験できるのは奈良市内に在住する者のみ。スポーツ推薦もなく、選手は一般入試で入学した普通の高校生しかいない。練習環境も恵まれてはいない。人工芝グラウンドはあるが、ほかの部活との兼ね合いでフルコートはとれず、校庭の脇にペナルティーエリアより少し大きめのものがあるだけで、多くの練習を土のグラウンドで行う。
 一条高を取り巻く環境は決して良いとは言えない。しかし、チームを強くしたいという前田久監督や、うまくなりたいという選手の思いはチームの強みだ。技術と判断にこだわったサッカーを標榜し、これまで6度の選手権を経験。今季の3年生は小柄ながら技術のある選手が多い期待の代で、夏に高校総体を経験するなど、順調なシーズンを過ごしていた。
 だが、8月に主将DF鈴木貫生の心肺機能が低下し、ドクターストップを受けた。二度の手術を経て予選中に復帰し、7度目の全国行きをつかんだが、チーム強化は思いどおりに進まず。12月に入ってから猛練習に励むも、今度は鈴木貫が大会前日にインフルエンザを患い、初戦の山形中央戦(1○0)はベンチにも入れなかった。代わりに主将を任されたDF稲葉大典が「勝ち進めば戻ってくる可能性があるので、そこまで頑張りたい」と話したように、復帰の可能性がある準決勝を目指し、チームメートが奮闘。初めて2回戦を突破したが、続く佐野日大戦は常に1点を追いかける展開に。MF加茂裕輝の2点で追い付き、PK戦まで持ち込んだが、3-4で敗れた。主将を晴れ舞台に立たせることはできなかったが、どこにでもある公立校でも全国で勝てること、仲間のために頑張る姿。一条が残した足跡は普通の高校生の希望になるものだった。(森田 将義)

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