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[横浜FM]持ち込まれた“欧州基準”。横浜FMはいま/中村俊輔 移籍特集

2017/1/11 6:00


 象徴とも言える選手の移籍騒動に直面したとき、クラブも指をくわえて見ていたわけではない。長谷川亨社長と利重孝夫チーム統括本部長は幾度となく交渉の席を用意し、中村本人に必要性を訴えた。その他の選手の交渉を後回しにしてでも背番号10の慰留交渉を優先した。現役だけでなく引退後の進路についても話は及んだという。だがプレーヤーとしての生き様にこだわりを持つ本人にとっては虚しく響くだけだった。
 この一件に限らず選手の人事に関して、現在の横浜FMは単体での決定権を持っていない。親会社の日産自動車に加え、資本提携するシティ・フットボール・グループ(以下、CFG)の意向も無視できない。交渉の真っ最中の11月21日、横浜FMはモンバエルツ監督との契約更新を発表。その前後に監督続投の是非が再び議題に挙がったようだが、結果は変わらなかった。これが一つの潮目となり情勢は移籍へと大きく傾いた。
 CFG独自の査定基準において、38歳という年齢は大きなネックとなっている。中村に限らず、2月に39歳になる中澤や33歳の栗原といったベテラン勢は大幅な減俸提示を受けた。これまでの貢献度は評価対象になっていない。良くも悪くもフラットに査定する欧州基準が持ち込まれた。選手たちの反発やクラブ内での協議によって徐々に軟化の姿勢を見せたが、根本的な部分でベテランが冷遇される傾向は今後も変わらないだろう。
 世代交代や若返りはどのクラブでも直面する問題であり、横浜FMはそれを先送りしてきた事実もある。CFGという、いわば外からの視点が入らなければ実現が難しい采配もある。人情や仁義といった部分を重んじる日本人には理解されにくいかもしれないが、変革期にドラスティックな側面があるのも事実だ。
 間違いなくマイナスに働くのは、集客をはじめとする営業面に与える影響だろう。クラブとして少なからずネガティブな面を見せたことで、スポンサーサイドには不安が広がっている。中村個人を応援するファンだけでなく、横浜FMサポーター全体にも波紋は広がり、年間チケット購入者からクラブの方に問い合わせも来ているという。多方面に向けての信頼を取り戻す作業は簡単ではなく、地道な作業を長い時間かけて積み重ねるしか方法はない。
 戦力面におけるダメージについて言えば、現実として中村は16シーズン後半を負傷で棒に振っていた。前線に優秀な外国籍選手がいれば、ある程度の成績は残せるリーグである。すでに加入が発表されているポルトガル人ストライカーのウーゴ・ヴィエイラのパフォーマンス次第で、17シーズンの優勝戦線に名乗りを上げることも十分に可能だ。
 これらを総合的に判断したときに、現段階でクラブの正否を問うことはできない。中長期的な視野に立って考える必要がある。17シーズンを戦い終えたときに、横浜FMがリーグ全体でどの位置に立っているか。J2降格では元も子もないが、冷静に見守る必要があるのではないだろうか。(藤井 雅彦)

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