MF 杉本 太郎
昨季は公式戦7試合の先発機会を得た。その数字が多いのか少ないのかは分からない。ただ、1度のチャンスしか来ない選手もいることを思えば、7度も機会があったのはかなり恵まれていた部類だろう。しかし、杉本太郎は壁を破れなかった。
練習ではキレキレだった。紅白戦の控え組で目立つことも一番多かった。ボールを持てば鋭い動きでDFの懐に入り込み、守備バランスを崩していく。「イメージを変える」という強い意気込みで練習に取り組み、その中ではうまくいった。しかし、試合では発揮できなかった。
必ず惜しいところまではいく。しかし、シュートは必ず外れた。それも1度や2度ではなかった。「(杉本)太郎はたぶん“代役”と思っていた。そこがポジションを獲ろうと思っていた(鈴木)優磨と違うところだと思う」
先輩である昌子の言葉はほろ苦く響いた。「イメージを変える」作業は1年で完結しなかった。だから、徳島からオファーが来たとき「行かせてほしい」とクラブに頼み込んだ。徳島の新監督に就任したリカルド・ロドリゲスが、映像をチェックして最も欲しがったという魅力的なオファーだっただけではない。自ら進んでこの道を選びたかった。
162cmの体は小さく、つぶされることも多い。ただ、倒されてもすぐに起き上がり、次も、またその次も前を向いてしかけていく。それは技術ではなく、戦う気持ち。その大切さは、チャンピオンシップ、クラブW杯、天皇杯の戦いで見たチームメートの姿から痛いほど感じ取れた。
勝つためにやるべきことが身に染みた。だが、見て学ぶのはもう十分だった。「必ず結果を出して成長して鹿島に戻ってくる」
そう誓って鹿島をあとにした。イメージを変える作業を終えるために。(田中 滋)
杉本 太郎(すぎもと・たろう)1996年2月12日生まれ、20歳。岐阜県出身。162cm/62kg。岐阜VAMOS→帝京大可児高を経て、14年に鹿島に加入。17年、徳島に期限付き移籍。J1通算19試合出場1得点。J3通算6試合出場。