Feature 特集

[男たちの決断。新たなる船出]自らの原点に回帰し、“肉食動物”の本能を取り戻す

2017/1/26 6:00


MF 阿部 浩之(G大阪→川崎F)

 脂が乗り切った選手が他クラブを新天地に選ぶ動機には主に二つのパターンがある。待遇の良さに惹かれる選手、純然たる成長を求める選手。
 阿部浩之のケースは明らかに後者である。「やっぱりガンバへの愛着もあるし、本当に迷います…」。昨季終盤、阿部は複雑な胸の内をこう明かした。
 昨季こそ無冠に終わったが、近年のJリーグをけん引して来た西の横綱で、阿部は勝利の美酒を十分に味わってきた。無尽蔵のスタミナでサイドを上下動し、自陣深くでSBをフォロー、絶妙な絞りで危険地帯をケア、と守備で存在感を発揮してきた13番は長谷川ガンバで欠かせないキーパーソンだった。「健太さん(長谷川)から守備面を鍛えてもらった」。阿部の偽らざる本音である。攻守の鋭い切り替えを可能にするトレーニングを日々こなし、守備面では飛躍的な成長を遂げた過去5シーズンは、阿部にとって否定する必要のない素晴らしいひとときだった。「阿部ちゃんの2度追い、3度追いはすごい」(丹羽)。1.5倍速の映像を見ているかのように、素早い動きで攻守に奔走した阿部は、G大阪における“守備のハードワーカー”であり続けた。
 ただ、「いまのサッカーは守備もできて当たり前。その上で攻撃で良さを出したい」。やはり阿部の本性は“肉食動物”である。関西学院大の4年次には関西学生リーグで得点王とMVPを獲得。小柄だが、左右両足でパンチの効いたシュートを放つ逸材で、本来はセカンドトップ的な役割を得意とするシューターだ。
 それゆえ、阿部は昨季しばしば、こんな思いを口にしていた。「自分でももっと点に絡みたい」。
 14シーズンはリーグ戦で7得点を記録したが、二ケタ得点に達したシーズンはいまだなし。だからこそ、阿部は自らの原点に回帰すべく、新天地での挑戦を選択した。ハードワークを覚えたシューターは、川崎Fで“肉食動物”の本能を取り戻す。(下薗 昌記)

阿部 浩之(あべ・ひろゆき)
1989年7月5日生まれ、27歳。奈良県出身。170cm/69kg。高田FC→大阪桐蔭高→関西学院大を経て、12年にG大阪に加入。17年、川崎Fに完全移籍。J1通算105試合出場16得点。J2通算30試合出場5得点。J3通算2試合出場。

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