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[男たちの決断。新たなる船出]黒子から主役へ。サッカー少年は北を目指す

2017/1/26 6:00


MF 兵藤 慎剛(横浜FM→札幌)
 複数年契約を残しながらも移籍の道を選んだ。すべてはプロサッカー選手としてピッチに立つためである。
 08年に加入してからの9年間で、兵藤はJ1リーグ戦計268試合に出場した。1シーズン平均約30試合の出場は簡単にできることではない。どの戦術にも対応し、いくつものポジションをアベレージ以上のレベルでこなす。負傷で長期離脱したことは一度もない。ピッチ内外で高い能力あってこそ成せる業なのだ。
 しかしエリク・モンバエルツ監督就任以降の2シーズンは不遇をかこった。特に昨季は自己最低の出場18試合にとどまり、先発は8試合のみ。主戦場のサイドMFとしてはスピードが足りなかった。「プロは試合に出てナンボ」と頭で分かっていながらも、横浜FMへの愛着があるため長く我慢の時間を過ごしてきた。だから今回の決断は誰にも咎めることはできない。
 新天地の札幌では、試合に出るだけが目的ではない。常にピッチに立ち、先頭に立ってチームを引っ張り、勝利へと導く。新戦力であると同時にリーダーとしての役割が期待される。振り返ると、横浜FMでの兵藤は常に黒子として働いた。主役の働きは背番号10の山瀬(現・福岡)や中村(現・磐田)、あるいは齋藤に譲り、自身は“バイプレーヤー”として価値を高めてきた。だが移籍先では試合を決めるような仕事を求められる。それだけ期待値が高い。
 2歳上の先輩として公私ともに長い時間を過ごしてきた栗原は「兵藤はどこのチームに行っても大丈夫。うまく合わせられるキャラクターだから」と太鼓判を押す。礼儀正しく先輩を敬い、後輩も大切にする人間性は誰からも好かれる。そして常に笑顔を絶やさずボールを追いかける姿は、まさしくサッカー少年と呼ぶにふさわしい。横浜から北の大地に場所を移しても、サッカーをエンジョイすることは変わらないだろう。
 節目のプロ10年目に人生で初めて移籍する。すべては兵藤が兵藤らしく生きるためだ。(藤井 雅彦)

兵藤 慎剛(ひょうどう・しんごう)
1985年7月29日生まれ、31歳。長崎県出身。172cm/68kg。海星中→国見高→早稲田大を経て、08年に横浜FMに加入。17年、札幌に完全移籍。J1通算268試合出場32得点。

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