耐え切って、エースが仕留め、守り切る
王者との一戦を前に横浜FCのモチベーションは高かった。試合前日、選手たちは等しく「鹿島とやれるのはすごく楽しみ」と語っていた。野村は「ボコボコにされても、(鹿島の強さを)肌で感じたい。プレッシャーがどこで来るのか。どういうポジショニングなのか。TVで見るのと自分がピッチにいるのとでは全然違うと思うので」と、目を輝かせていた。
実際に試合は、前半は鹿島がその強さを誇示した。横浜FCはほとんどボールを握れず、ペナルティーエリアに一度も侵入できなかった。前線のペドロ・ジュニオールを抑えることができず、外から中、中から外へと振り回され、12分に田中のシュートがポストをかすめると、18分には伊東のクロスに赤が合わせる決定機。GK南の驚異的なセーブがなければ試合はここで決まっていてもおかしくなかった。
しかし前半の半ば過ぎから、横浜FCの対応にある程度の“慣れ”が感じられるようになる。負けていた球際で互角に粘れるようになり、少しずつボールを持つ時間が長くなり、迎えるピンチの数は目に見えて減っていった。
そしてハーフタイムに指揮官から「やろうとしていることをまず実行しなさい。その結果を見るための試合なんだから」と送り出された選手たちは、後半キックオフから鹿島ペナルティーエリアまで持ち込み、野村がシュートを放つ。その1分後、西河のフィードを津田が落とし、走り込んだジョン・チュングンがクロスを送ると、ゴール前で待ち構えたイバが先制ゴールを突き刺す。その後も互角の戦いを演じた横浜FCが、エースの挙げた1点を守り切った。
相手にペースを握られてもしっかり耐え、攻勢をかける時間帯にしっかりと取り切る。それは「僕らの目指す完成形」と野村がリスペクトする、鹿島らしさにも似ていた。(芥川 和久)