4-1の快勝に選手たちは笑顔を交わし合った。ハイタッチする姿もあれば、抱擁する姿もある中、二人はチラリと相手の顔を見たあと、軽く手を合わせただけだった。
J1通算500試合出場の感慨などどこにも感じられない。小笠原が「ソガ(曽ケ端)に聞いて」と言い残してスタジアムを去れば、曽ケ端も「いつもの試合と同じでしたか」と尋ねると「そうですね」と返してくる。試合後のロッカーではチームメートからあらためて祝福されたようだが、三竿健が誕生日だったこともあり、途中から何のお祝いだか分からなくなってしまったそうだ。
『500』という数字を騒ぐ周囲に対し、小笠原は「何試合出たかではなく、どれだけ勝てたか」と取り合わず、曽ケ端も「試合数を求めてやっているわけではない」と淡々としていた。その姿を見たチームメートからも「二人にとっては通過点」という声が聞かれた。この数字をすでに達成している選手は6人おり、物珍しいわけでもない。記録としての価値は薄いのかと思われた。
しかし、そんな中で偉大な記録であることを指摘したのが今季リーグ戦初得点を決めたペドロ・ジュニオールだった。
「ビッグクラブでこの数字を出すことは非常に難しいこと。彼らのプロ意識がこの数字に表れていると思う。二人は良いお手本だと思うし、自分も少しでもそういう数字に近付きたい」
鹿島が獲得した国内タイトル19冠のうち、二人が関わったのは16冠。その存在について石井監督は「ピッチ内に指揮官が二人いるようなもの」と評す。この日も、西が攻撃的な位置取りをすれば小笠原がカバーし、チーム全体の守備バランスを曽ケ端が整える。公式戦2連敗中のチームとは思えないほど選手個々が躍動し、互いの良さを引き出す好循環が生まれていた。その輪の中心にいたのはベテランの二人だった。(田中 滋)