ゴールは水溜まりに落ちる滴のようだ。その間際、静寂が歓声をのみ込むように、見る者の神経を研ぎ澄ませる。ボールがネットを揺らすと波紋のように歓喜が広がり、スタジアムを激しく包み込む。39分、渡邉の挙げた芸術的なゴールは劣勢に立っていたチームに勢いをもたらす極上のきっかけだ。「キープよりは、ペナルティーエリアの中だったし、反転しながらシュートした。思いどおりにいったかな」と振り返った神戸のストライカー。“激しさ”を取り戻した神戸は一気にリズムを手繰り寄せた。だが、神戸は負けた。渡邉の3試合連続となる一撃も実らず、首位との勝ち点差は『7』に開いた。
神戸のリーグ戦の直近7試合は、1-1のドローと1点差ゲーム。今季の真骨頂である粘り強さは発揮しているが、一度の対応不良が敗戦に直結することが少なくなく、得点力の停滞もなお続いている。0-1の敗戦なら得点力が課題か、1-2の敗戦なら守備に問題があるのか。一部分にフォーカスしてもチーム力の向上にはつながらない。つかもうとすればするほどに逃げていく、うなぎのようなものだ。
試合前、田中順は現在のチームを“木”に例えていた。指揮官の戦術は対戦相手に応じて毎試合のように変化するが、「それはあくまで枝で、大切なのは幹を太くすること」と説明。その上で、「自分たちがどういうサッカーをしたいのか、選手たちがもっとまとまる必要がある。試行錯誤して、結果が出始めれば、このチームはもう一段階上に行ける」とも話していた。
図太く、強固な幹作り。試合ごとに必ずあるそれぞれの反省点を実直に受け止めてこそ、チームの可能性は切り拓かれる。(小野 慶太)