山口は意外な用兵に打って出た。パク・チャニョン、渡辺、福元の3バックに加えて、廣木をイバのマンマークに付けた。「スッポンのように付いておけと言われていた」という廣木は、山口の攻撃時にもイバから離れない。二人の身長差は22cm、体重差も20kgある。「廣木にはジャンプ力も、力もある。本当に強さを持っている選手を選んだ」(猿澤監督)とはいえ、彼がマークした時間内で7本のシュートを許し、微妙な判定とはいえ前半終了間際にPKも与えてしまった以上、さすがに無理があったと言わざるを得ない。
1点を追う山口は55分、廣木を下げて前線に和田を投入し、「明らかに勝ちにいった」(猿澤監督)。実際、そこからは山口の圧力を受け、横浜FCは防戦一方となる。山口の猛攻の前に守備ラインを下げられ、本来は終盤に中山や増山といった若いアタッカーを投入するプランを修正し、ベテランの野崎を入れて前線から守備をさせることで「なりふり構わず勝ち点3を取りに」(中田監督)いかざるを得なかった。
山口にとって「相手チームのエースを止めることが大前提だった」(猿澤監督)ことは、7戦勝ちがなく最下位に沈む状況から仕方がなかったため、理解できる。しかし、「向こうの勢いは驚異的だった」と、勝利した指揮官を脱帽させた本来のスタイルを貫いていたら、勝負はどうなっていたか。山口にとって、誰より暫定監督にとって悔いの残る敗戦だった。(芥川 和久)