咆哮。阿部はこの日、二度吠えた。
同点ゴールは「魂の」と表現するにふさわしいものだった。森脇のミドルシュートがポストに当たってはね返ってきたボールに反応し、右足を振り抜いて押し込んだ。そしてゴールが決まると、阿部は右拳を突き出して吠えた。
二度目はヒーローインタビューだった。「苦しいときに仲間内で声を出している」と言いながら、「サポーターのみなさんの一声があったから逆転という結果を達成できた」と感謝すると、「これからはい上がっていきましょう」と吠えた。
思い出されるのは15年のシーズン序盤。浦和はACLグループステージ第2節でブリスベン・ロアー(豪州)に敗れ、公式戦開幕から3連敗を喫した。その試合後、サポーターに向かって「一つになろう」と叫び、J1第1節・湘南戦を経て、ホームで行われたJ1第2節・山形戦で決勝ゴールを挙げたのが阿部だった。
試合中に大声を出すことは阿部にとって珍しいことではない。ただ、「吠える」と言えるほどに叫ぶのは阿部でなくともそう多いことではないだろう。その右足に、その拳に、そしてその声に、どれだけの思いが込められていたのかは計り知れない。
思えばミシャレッズが窮地に陥った際、いつもチームを救ってきたのがこの主将だった。ただ、阿部も今年で36歳になる。まだまだ十分に第一線で戦っていけるはずだが、現役生活の残り時間もそう長くはないだろう。彼のように窮地を救う存在がもっと出てこなければならない。浦和が強くあり続けるためには、いつまでも阿部に頼り切っているわけにもいかないのだ。
ただ、言い方を変えれば、36歳になるシーズンになってもなお、阿部の存在感は浦和にとって大きいということ。ここぞというときにプレーで、言葉で人を惹きつける。やはり頼れる主将だ。(菊地 正典)