流れを呼んだ俊足。第3の男が登場
流れが大きく傾いたのは67分。水戸はFW林を下げ、新加入のFW齋藤恵を投入する。前線に齋藤、前田、湯澤を並べ、彼らのスピードを生かした攻撃をしかけていった。
「走らせろ! 走らせろ!」
ベンチから轟いた指示の声に従い、3人の爆発的なスピードを生かすためにシンプルに前線にボールを送り、相手守備陣に圧力を掛けていく。その勢いに押された東京Vは最終ラインを下げざるを得なくなり、水戸が押し込む展開が続いた。そして78分のゴールは、その流れの中から生まれた。
前田が先発に定着した第6節・山口戦以降、林と前田が2トップを組む試合が続き、最大で13戦無敗&5連勝を飾った。ただ、リーグ前半戦だけで計17得点を挙げた絶対的な2トップをなかなか交代させることができず、試合を重ねるごとに対策を練られ、そして疲労の蓄積からパフォーマンスを落としていく。第21節・岡山戦以降、チームは4試合勝利から見放され、彼ら二人にもゴールはなかった。
再び上昇気流に乗るためにも、新たなFWの台頭が求められていた。そこで獲得したのが齋藤恵であった。前田に引けを取らない俊足ストライカーを加えることで攻撃を活性化させようとしたのである。また、前節・大分戦では高さと強さを武器とする宮本が今季初先発を飾り、及第点のプレーを披露したことも明るい材料。林と前田の2トップだけでなく、状況に合わせていかに前線の組み合わせを変えていけるかが再浮上へのカギを握っている。
そういう点で、一つの光明を示したと言えるだろう。体力的に厳しい時間帯に齋藤恵を投入し、スピードを生かした縦に速い攻撃を繰り返したことによって東京V守備陣を苦しめ、逆転勝利を収めることができた。「これからコンビネーションを高めれば、もっと良くなると思う」と、前田は自信に満ちた表情を見せた。
「今後に可能性を感じたか?」
その問いに対して、前田は悩むことなく首を縦に振った。(佐藤 拓也)