
監督として2度W杯に出場し、どちらも16強進出
メキシコの“岡田武史”? 短期間で立て直す
ハビエル・アギーレは過去2回、2002年日韓W杯と2010年南アフリカW杯において、メキシコ代表を率いてW杯を戦っている。就任は2001年7月と2009年4月。いずれも日韓大会、南アフリカ大会まで1年程度という切迫した時期に、チームが不振にあえぐ中で指揮を任され、予選でしっかりと結果を残して本大会出場権をもたらしている。日本代表において、かつて岡田武史氏が置かれた状況と似ていると言えるだろう。
いずれの任期でも短期間でチームを立て直しているが、優れているのはモチベーターとしての手腕だ。メキシコは「マチスモ」(男性至上主義)が根強く残る国で、男らしさ、つまり男性の強さや闘争心が尊ばれる傾向がある。アギーレは普段のトレーニングやミーティングでその部分を刺激して選手たちに自信を植え付け、チームを戦う集団へと変貌させるのだ。
ちなみに、ブラジルW杯でメキシコを率いたミゲル・エレーラも同じようなタイプの指揮官。“打てば響く”メキシコ人には、アギーレやエレーラのような熱血漢がハマるのかもしれない。
当然の帰結として、選手たちには戦う姿勢、前に出る積極性を求める。相手ボールのときには果敢なプレスをしかけていき、奪ったボールを素早く前線に展開してゴールを目指すスタイルが「堅守速攻を志向する」と言われるゆえんだ。
ただ、メキシコの選手たちはサッカーを熟知し、あらゆる戦術に対応できるため、カウンターの際にも複数の選手がプレーに絡み、素早いパスワークで相手を切り崩すことができる。技術力が高く、ハードワークに従事できる選手が多い日本でも、同じような戦術を構築したいと考えているはずだ。
南アフリカW杯の本大会では、試合のたびにキャプテンを代え、GKにはギジェルモ・オチョアではなくオスカル・ペレスを、FWにはハビエル・エルナンデスではなくギジェルモ・フランコを重用するという不可解な采配をして批判を浴びた。しかし、これはサッカー界への影響力が強い地元テレビ局の意向が反映されたのではないか、という説もある。アギーレに限らず、歴代のメキシコ代表指揮官は万人が疑問を抱くような選手起用をすることが多い。これらがすべてテレビ局の圧力のせいであり、それが反抗できない類のものだとしたら、南アフリカW杯での不可解な選手起用の責任をアギーレ一人に押し付けるわけにはいかないだろう。その意味でも、日本でどのような選手を招集し、どのように起用するかが、彼の手腕を問う一つの基準となる。(池田 敏明)