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[西部謙司]よくわかるサッカー用語解説 第12回 ロングシュート~下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる?!~ / メールマガジン事務局

2011/6/15 20:06 0

西部謙司メールマガジンの第十五回を配信いたしました。ブロゴラでは、西部謙司メールマガジンの一部が無料で読めます。

 


◇◆ベッカム、ハーン、小笠原・・◇◆


 何メートルからロングシュートなのか。どこからがミドルで、どこからがロ

ングという決まりはありませんが、20メートル前後ならミドル、30メートル以
上ならロングというイメージでしょうか。20~30メートルは、そのときの気分
ということで(笑)。

 ハーフラインぐらいからの超ロングシュートで思い浮かぶのは、マンチェス

ター・ユナイテッド時代のデビッド・ベッカム。GKが前に出ているのを見て、
ハーフラインの手前ぐらいから入れたシーンがありました。最近ではデヤン・
スタンコビッチが、GKのキックをボレーで蹴り返してゴールしていましたね。
50~60メートルぐらいからの超ロングとなると、ほとんどはGKがゴールにいな
いか、前に出すぎているケースだと思います。小笠原満男も代表戦でハーフラ
インあたりから決めています。GKの位置を冷静に見ていました。

 もう少し短い距離、といっても30~40メートルですが、この距離だとGKもあ

る程度シュートを警戒していますから、コースだけでは入りません。シュート
のスピードや変化、コースが相まって入ることが多くなります。W杯では78年で
立て続けにロングシュートを決めたアリー・ハーンが印象的でした。飛んでい
くうちにナチュラルにスライスする軌道でした。

◇◆ゴールが見えたら打て!?◇◆


 昔から「ゴールが見えたら打て」といいます。チャンスがあったら躊躇なく

シュートすべきだということですね。ただ、やたらシュートを打てばいいかと
いうと、やはりそれは違う気もします。ゴールが見えたらというより、入るコー
スが見えたらが正しいのではないでしょうか。

 ロングシュートが入るコースというのは、意外とあるものです。ゴールから

40~50メートルも離れていると、GKはシュートよりもディフェンスラインの裏
に出てくるパスを警戒して前進していることが多いので、GKの頭上を越えるコー
スが空いています。プロの選手がフリーで打てば、3回に1回ぐらいは入るコー
スではないでしょうか。ただ、試合中はその場所でもそんなにフリーにはなり
ませんから、たまたまフリーになった瞬間に、そのコースがあればということ
ですね。

 30~40メートルの距離の場合は、コースだけではなかなか入りませんから、

球威そのものが必要です。スピードがあって、なおかつ変化するシュートのほ
うが入りやすいと思います。最近のボールは軽くて変化しやすいので、この距
離から打てば自然と変化する軌道になりますが、GKの反応を遅らせるには急激
な変化が必要になります。GKにとって最も厄介なのは無回転のブレ球でしょう。
変化が予測できないからです。無回転のブレ球はこのぐらい距離があったほう
がブレも大きくなります。

◇◆思い切り打つこと◇◆


 ボールが軽くなったこともあって、ミドルレンジのシュートでもサイドキッ

クを使うことが多くなりました。30メートルぐらいならば、インサイドキック
でコースを狙っても十分速いシュートを打てるからです。

 70年代あたりまではもっとボールも重くて、ロングシュートを狙う選手はほ

とんどインステップで力いっぱい蹴っていました。イングランド代表やマンチェ
スター・ユナイテッドで活躍したボビー・チャールトンは強烈なロングシュー
ターとして有名で、「キャノン(大砲)」と呼ばれていました。ブラジルのロベ
ルト・リベリーノも信じられないようなパワーシュートを打っていました。2
人とも小柄な部類で、非常にテクニックのあるプレーメーカー、そして左利き
というところが共通項ですが、シュートに関してはとにかく思い切り打ってい
ました。

 チャールトンもリベリーノも豪快なシュートを決めていますが、実は外すと

きもかなり豪快に外していました。少しズレたところを蹴ってしまうと、パワー
があるだけにとんでもない方向へ飛んでしまう。コーナーフラッグへすっ飛ん
でいったり、2階席へ打ち上げたり・・。これはシュートではありませんが、7
0年W杯のときにリベリーノはCKを逆サイドのコーナーまで蹴ってしまったこ
とがありました。CKを蹴るときに軸足を滑らせて転んでしまい、ミスキックに
なったんです。しかし、ミスとはいえ反対側のコーナーまで飛ばしてしまうキッ
ク力に唖然とした覚えがあります。

 チャールトンやリベリーノのようなパワーキッカーの場合、枠にシュートが

飛べば点になる可能性があります。ですから、彼らはフルパワーで狙うんですね。
枠内なら1点、そのかわり外すときは豪快に外れる。日本には少ないですが、
ヨーロッパにはパワー専門の選手がけっこういます。そういう人はヘタにコー
スを狙わずに、思い切り蹴りますね。ロベルト・カルロスがそうでしたし、セ
ンターバックはこのタイプが多いかもしれません。そういう選手がボールを持
つと、フランスでは観客がよく「ブーン!」と声をかけてシュートを要求して
いました。

メルマガ本文に続く


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