シーズンが開幕したころ、ボランチは横浜FMにおいて最も選手層が厚いポジションだった。昨季のレギュラーである富澤と中町を軸に小椋、三門という実力者が控え、現在は湘南に期限付き移籍した熊谷やアジア大会メンバーの喜田もいる。ACL出場による連戦を考えて強化したポイントでもあった。
しかし、ここへきて中町、小椋、三門が立て続けに負傷離脱。この緊急事態に樋口監督は本来、攻撃的MFの兵藤をボランチで起用した。「ユーティリティープレーヤーとして計算できる」(樋口監督)という意図があり、数年前はボランチを主戦場にプレーする時期があったことからも大きな不安はなかった。
かくして清水戦では指揮官の期待どおりのパフォーマンスを見せた。コンビを組んだ富澤は「兵藤はすごく気が利く選手。人と人を見ながらプレーできる。ずっと一緒に組んでいるような感覚だった」と称賛した。的確なポジショニングでセカンドボールを拾い、マイボールになれば確実に味方へとパスを届け、機をうかがいながら高い位置を取り、今度はレシーバー役として潤滑油の役目を演じる。さまざまな役割をこなしながら藤本のゴールのアシストまで達成したのだから、文句なしのパフォーマンスであろう。
兵藤は今季、一度もボランチとしてプレーしていなかった…