復活の原動力。焦りではなく「飢え」
「FWは結果がすべて。見返すくらいの気持ちでゴールを狙っていこうと思っていた」。23年に9得点。24年には16得点。強い覚悟をもって移籍した藤枝で、矢村健は自分らしさを取り戻した。
タイミングのいい背後への抜け出しや、どんな形も体に当てて、ときにはアクロバティックにゴールにねじ込む泥臭さが魅力のストライカー。しかし新潟でプロになった20年、チームは堅守速攻からポゼッションスタイルへと転換。より足元の技術やビルドアップへの関わりが求められる中で、持ち味が薄れていった。新潟で残せた数字は、3シーズンでわずか5得点。プロ3年目の22年、新潟のJ1昇格を見届け「このままではJ1でやれない」と、翌年から藤枝へ期限付き移籍した。
結果にこだわり、ゴール前に顔を出し、パスを要求し続けた甲斐あって、移籍1年目は9得点。だが「二ケタ取らなければ帰れない」と納得せず、藤枝からのオファーもあって移籍期間を延長した。背番号9を預られ、期待された2年目は開幕から先発をつかんだが、12試合無得点。焦りもあった。しかし「焦り」を「飢え」と捉え直したことで、ラクになった。「『焦らないようと意識するほど焦るけれど、『飢えないように』とはならない」。劣勢から2点を叩き込んで逆転した第13節・群馬戦(2●1)を皮切りに、第36節までの24試合でJ2得点ランキング4位の16得点を積み上げた。シュート総数(142本)、枠内シュート総数(45本)、1試合平均シュート数(3.7本)は、すべてリーグ1位。尽きることのない「飢え」は数字にも表れた。
二ケタ得点を達成し、胸を張って帰還した新潟でも、9番を託された。「J1でどれだけゴールを取れるかは挑戦だし、それが9番である意味。ゴールに飢えて、ゴールを取るのが自分の理想像」。ゴールハンター矢村が、念願の舞台で暴れる。(文・野本 桂子)