■札幌
札幌一筋のバンディエラ・深井のために勝利を
1年前のいまごろはJ2降格が決まり、「絶対に1年でJ1に戻る」と息巻いてシーズンを締めくくっていた。本当ならば歓喜でこの2025シーズンを終えるはずだったが、実際はどうか。現時点で12位。二ケタ順位でシーズンを終えることがほぼ確定している。昨年よりも大きく立場を悪くしてしまっているだけに、本来は昨年以上に強いリバウンドメンタリティーを示さなければいけないはずなのだが、残念ながら昇格を絶対目標としていたチームが二ケタ順位に低迷している状況では、なかなかそうもいかないだろう。まずはチームの立て直しに向けて現実を精査することが先だ。
そしてこの試合は、すでに今季限りでの引退を発表している深井のラストゲームとなる。11年のU-17W杯で日本代表の中心選手として活躍し、満を持して13年からトップチーム昇格を果たしたアカデミー出身のタレントがピッチを去る。欧州リーグやA代表での活躍などを期待されながらも、度重なる膝の大ケガによって阻まれてきた天才選手だが、ケガを抱えながらも地元クラブのために体をすり減らしてきた生き様は、見る者すべてに力を与えてきた。ある意味では前述の活躍以上のことを成し遂げてくれたと、ここであらためてたたえたい。出場時間は限られるだろうが、最後の雄姿はぜひ語り継ぎたい。
昇格のために大きな赤字を計上したため、来季以降に向けて強化費の削減に迫られている。その中で12月12日からはOBの河合竜二氏がGMに就任することが決まるなど、ピッチ外にも注目が集まるが、ひとまずは深井を勝利で送り出すことも含め、ホームでどん欲に勝利を目指す姿をクラブとして示さなければいけない。(文・斉藤 宏則)
■愛媛
愛媛を支えた青野監督。これは未来への“初陣”
アオシン、愛媛でのラストマッチ。
大卒で加わった選手時代を経て、長きにわたって指導者として愛媛を支えてきた青野慎也監督、愛称“アオシン”だが、すでに今季限りでの退任が発表済み。ルーキー指揮官として今季途中で大役を担うも、自身が思い描いた未来とはかけ離れた結果に終わり、道半ばで思い入れの深い故郷クラブを去ることとなる。
「僕も苦しかったし、サポーターも苦しかった。最後くらいはみんなが笑顔で終われるような試合にしたい」(青野監督)
監督就任後、チームは2勝を挙げるにとどまるも、組織としても個人としても成長を遂げている自負はある。勝負モロさは常につきまとってきたものの、アタッキングサードでショートパスをつないで崩す躍動的な攻撃には試合を重ねるごとに手ごたえを感じ、勝利が近づいている感覚も得ているはず。前節・熊本戦では前半でハードワークを強調するひたむきさ、後半で強みの攻撃面を打ち出して勝負に出る新たなプランを披露し、「ここにきてチームのオプションが増えた」と指揮官は最後まで成長を見据える姿勢を崩さない。
「チームを勝たせたいという気持ちが一番。それ以上でもそれ以下でもない。勝った上でこの先の自分の成長につなげることができれば。そしていつか、また愛媛が評価してくれて、呼び戻してくれるような人材になりたい」(青野監督)
選手時代も含め、目立った実績こそないものの、地道にコツコツと積み上げてきたサッカー人生、その一つの区切りの試合はゴール地点ではなく新たな出発点。未来への“初陣”は幸先のいい勝利で飾りたいものだ。(文・松本 隆志)