チャンスは作るも、放つシュートは相手DFに防がれ、バーの上を越えていったシュートも数知れず。失点も守護神・楢崎の珍しいセービングミスが絡み、さらに槙野には完璧な一撃を食らった。「1失点目はコミカルな形。2失点目は月から降ってきたようなシュートだった」。ストイコビッチ監督も独特の言い回しで、この敗因を振り返るしかなかった。「アクシデントがよく起こるシーズンだった」(闘莉王)。浦和戦は今季の名古屋を象徴するような90分間だった。 しかし、アクシデントだけでこの試合の負け、引いては今季の“敗北”を片付けることはできない。ここ数年の好成績やパフォーマンスを維持できなかった理由を、偶発的な要素だけに集約してしまうことは、非常に危険な考え方だ。自分たちの醜い部分から目を背けたくなるのは人間の性でもある。それでも選手たちはこの試合も含めて、なぜ今季は不甲斐ない試合を続けてしまったのかを理解している。「戦い方が定まらなかった」。こう代弁したのは、本職のCBにFWと、あらゆる起用法に振り回されてしまった闘莉王だ。パスを回して攻めていくのか。縦に速い攻撃を意識するのか。または高さを生かしたロングボールを徹底するのか。名古屋にはこれらのすべてを可能にする人材がそろっている。ただし、起用した選手のタイプと戦い方の選択が適合しないことが多く、せっかくの個の能力も宝の持ち腐れとなった。「後ろからパスを回したかったら、ビルドアップができる自分はDFでプレーし続けるべき。自分がFWなら、もっと長いボールを入れるべき」(闘莉王)。けが人続出の影響により、メンバー構成に苦しんだのは間違いないが、それ以上に人選と戦術のミスマッチが選手個人のミスを呼び、その結果失点、勝ち点喪失というチーム全体の悪循環に陥っていった。 ミスや失態は選手の責任、だけではない。「今季は7位なりのサッカーしかしていない」(楢崎)。目を覆いたくなるような自分たちの姿。指揮官・ピクシーは、この現実を直視しなければならない。