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グアテマラ戦マッチレポート:各自“アピール”に終始も、実力どおりの順当勝ち

2010/9/8 17:20 0

文・藤井 雅彦

 サッカーの世界でFIFAランキングは参考程度にしかならないが、32位の日本と119位のグアテマラではさすがに実力に大きな開きがあった。パラグアイよりも明らかに格下の相手に対して日本は、「なるべく多くの選手を使いたい」(原監督代行)という意図の下、先発を6人入れ替えて臨んだ。

 パラグアイ戦の得点シーンを振り返ると、相手にとって危険なスペースを嗅ぎ取った香川のランニングが中村の鋭い縦パスを導いた。このランニングこそが以前の日本との決定的な差で、“右にならえ”とばかりにグアテマラ戦では各選手がボールを要求し、エリア内に侵入していった。まず12分の先制点は長友の縦突破に森本が呼応。ニアサイドに走り込み、パーフェクトなヘディングでゴールネットを揺らした。20分の追加点はパラグアイ戦のゴールをほぼ再現した形。橋本から本田にパスが渡った瞬間、香川は迷うことなく動き出していた。トラップからのシュートこそGKに防がれたが、こぼれ球を森本がキッチリ押し込む。グアテマラは[5-3-2]に近い布陣を敷き、守備時は8枚がしっかり引いていた。しかし、ボールサイドにプレスがかからず、日本のスキルの前になすすべがなかった。森本の2点目が決まった時点で、実質的に勝敗は決まったといっても過言ではない。

 それでも『好事魔多し』とは、まさにこのこと。順調に試合を進めていた日本だが一つのミスが試合の戦況を変えた。2-0とした数分後、槙野が自陣で本田の足元へ縦パス。本田はダイレクトで橋本へ落とすパスを選択したが、これがスムーズに渡らずにグアテマラへ。カステージョからボールを受けたM.ロドリゲスは、トラップから振り向きざまに右足を振り抜き、日本を慌てさせる得点を奪った。とはいえ、その後にグアテマラが日本ゴールを脅かしたのはエリア外からのミドルシュートばかり。後方から選手が湧き出てくる日本の攻撃とは大きな差があった。

 にもかかわらず、日本の選手の多くがアピールではなくエゴイスティックなプレーに走ってしまったのは残念だった。左サイドを抜け出した長友が中央にいた3人の選手へのパスではなくシュートを選択した44分の場面が象徴するように、組織の中で個性を生かすという大前提を忘れてしまった。後半から出場したグアテマラGKモリーナが“当たっていた”こともあり、最後まで3点目は生まれず。緊張感あるパラグアイ戦とは対照的に、弛緩した雰囲気の悪い意味での“アピール合戦”になってしまった。

(提供元:サッカー専門紙EL GOLAZO)


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