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サッカーが持つ、もう一つの美徳
「それにしても、勝負強くなったね」
試合後の取材エリアにて思わずそんなことを口走ってしまったのだが、それを聞いたDF遠藤航も微笑みながら「いや、本当にそうっすね」と返してきた。
トーナメント戦を勝ち残ったチームに関して、しばしば「一戦一戦、力を付けて」なんて言い方をすることがある。筋力や技術、あるいは知力にしたところで数試合の経験でジャンプアップすることなどあるはずもないのだが、それでも当事者たちが「力が付いた」と感じることはあるものだ。今回の手倉森ジャパンは「本当にそんな感じ」(植田)で力を蓄え、雄飛したように見えるチームだった。
チーム立ち上げ直後、ほぼ「自分が選んだわけではない」選手たちで臨んだ14年1月のAFC・U-22選手権。手倉森誠監督が目撃したのは、自身のサッカー観と照らし合わせると、大きなクエスチョンが浮かぶ光景だった。
試合の流れに流されるまま、良い流れのときは良いプレーをして、悪い流れになると濁流にのまれるように崩れていく選手たちの姿だった。確かなポテンシャルを持ちながらも、どこかチグハグ。ほとんどがJクラブの下部組織育ちで、主導権を握って勝つことを美徳として叩き込まれてきた新世代の選手たちは、逆に主導権を握れず、“自分たちのサッカー”が表現できなくなると、驚くほどの脆さを見せた。
彼らがU-19日本代表として……