柏木がFKで2アシスト。下地を作ったハードワーク
退場者を出したチームのほうが選手一人ひとりの責任感と運動量が増して試合を優勢に進める。それは“11対10”の状況で起こりがちな展開だが、先制され、なおかつ70分近くを10人で戦わなくてはならない状況はさすがに厳しい。しかも、70%を超える湿度という条件下ではなおさら難しい。それでも浦和が逆転勝利を収めた背景には何があったか。
数的不利な状況で多くの得点機を作り出すことは、タレント豊富な浦和とはいえ難しい。そうなるとセットプレーは貴重な機会。その認識が十分にあった柏木は精度の高いFKから2アシストを記録したわけだが、本人はそこでの“駆け引き”を強調した。
「福岡は高さがある選手が多い」(柏木)。那須のヘッドで奪った1点目の場面では、福岡の高さが集中するニアを避けて、マーカーとの駆け引きのための十分なスペースがあるファーへボールを送った。2点目の駆け引きは1点目の“残像”を利用したもの。「ファーにいた(那須)大亮さんあたりにマークが集中していたのでニアに動き出した」と言う興梠の動きに呼応するかのように、柏木はグラウンダーの速いキックを選択。まんまと福岡の裏を取った。
二つの得点は柏木の精度の高いキックと巧みな駆け引きから生まれたが、その下地を作ったのは全員のハードワーク。中でも「全員がよく走り、全員が球際でファイトした」と振り返る武藤と、10人になってCBにポジションを移した阿部の働きぶりは特別だった。武藤は運動量とキープ力で中盤での主導権を簡単には渡さず、阿部は福岡のシュートに体を投げ出して何度もゴールを守った。駆け引き上手な浦和のしたたかさと我慢強さが生んだ逆転勝利だった。(島田 徹)…