工藤には、ゴール後にやろうと決めていたことがあった。前節の甲府戦でも考えていたのだが、久しぶりの得点ということもあって忘れていたのだという。次こそはと、そう決めて臨んだこの試合、唯一のシュートを放ったのは74分。高山からのパスでディフェンスラインの裏へ抜け出すと、GKと1対1になり、落ち着いてボールをゴールへ流し込むことに成功する。
今度は、忘れなかった。カメラに向かって右手で一本、左手で四本、それぞれ指を立てる。『14』。右足首骨軟骨骨折のため、ボールが蹴られない日々を過ごす仲間へ送るメッセージだった。「見舞いに行って元気な姿を見られた。(田中)順也くんが抜けて、後半戦のカギになる選手だった。僕らよりも一番健ちゃん(狩野)が悔しいと思う。けがしている選手とも一緒に戦いたい」。病室で約束したことを、今季初の公式戦2試合連続ゴールで守ってみせた。
ただ、苦しんでいたのはけがを負った狩野だけはない…