DFのチャージを交わすと、徐々にドリブルの速度を上げていく。「正直、『決まっちゃった』という感覚です」と謙遜したが、自信がなければあそこで足は振れない。前にはフリーで待つ味方もいる。それでも、最終的に自分で蹴り込むと決めた。左足一閃。大歓声が湧いた直後、武藤嘉紀は「時が止まった」感じだったという。代表2戦目にして初得点。アギーレジャパンにとってもうれしいファーストゴールだった。
その瞬間、フラッシュバックした光景があった。
過去のシーンの当事者は、本田圭佑。2010年10月、あれは今回のアギーレ体制と同様、ザッケローニ体制2試合目の韓国戦だった。後半、唸りを上げるようにギアを切り替え、DFを圧倒していく本田。迎えたロスタイム、ハーフウェイライン付近でボールを奪うと、ドリブルで推進していった。前方には右に中村憲剛、左に前田遼一がフリーで走る。しかし、本田はゴールしか見ていなかった。右サイドから中央に侵入し、最後は左足を強振。結局シュートはGKの好セーブに阻まれてしまったが、誰もがパスの判断を選ぶであろうところで、自ら試合を決めにいったのだった。
あれから4年。本田は、この日の武藤のゴールシーンについてこう語った…