「これがいまの実力です」
土居が短く言い残す。この日も相手を大きく上回るシュート20本を放ったが、ゴールネットが揺れたのは2度のみ。2度の先行を守ることができず、痛恨の逆転負けを喫した。
この日、台風18号の影響で全国的に雨に見舞われた試合がほとんどだったが、カシマスタジアムでも試合前から激しく降る雨が試合を難しくした。濡れたピッチで威力を発揮する馬力。「右利きのダヴィ」とパトリックを警戒していた昌子だったが、自身は右足の太ももを痛めていた影響もあってか、シンプルに最終ラインの裏に出されたパスへの対応にいつもの鋭さがない。前半、何度も起点を作られるとチーム全体の重心は自ずと下がってしまった。
さらに雨に濡れたピッチが中央での組み立てを制限する。小笠原と柴崎のコンビネーションで相手を崩す場面は少なく、相手を中央に集めてからサイドに展開するわけではないため、右MFの遠藤康にボールが入ると素早く相手に囲まれ攻撃機会を失うばかり。28分、小笠原から山本に「サイドハーフに食い付くのを遅らせろ」という指示が出て、昌子をサポートする体勢を整えたが、直後にオウンゴールで失点するなど前半は流れが悪かった。
しかし、そこで生きたのは…