同じ“90分間走”でも、浦和はきれいに舗装されたレーンを走り、甲府は障害物競争をしていた。
Jリーグ初先発を飾った畑尾が、左右の肺を手術したのが昨年の9月。1年前のいまごろは、まだリハビリの初期段階だった。彼の「サッカーを楽しもう、できることに喜びを感じよう」という言葉には、競技が続けられなくなる瀬戸際を経験した彼だからこそのリアルがある。
自ら「思ったより緊張せずに入れた」と口にするように、この試合の畑尾は落ち着いたプレーで堅守の維持に貢献した。「ユースや大学のデビュー戦、大学1年の早慶戦は舞い上がって自分のプレーができなかった」という畑尾だが、人間的に一皮むけたのだろう。彼は「病気になって、そういうところのメンタルも強くなった」とはっきり口にする。体への負担と、大学4年の春から約2年のブランクは決して小さくなかった。しかし、試練を乗り越えて得たモノがある。
残留争いを強いられている甲府だが、それぞれが持つ“逆境の経験値”はライバルクラブに負けない強みだ…