「エース」という肩書きが希代のシューターの肩に重く伸し掛かっていた。
再開後のリーグ戦直後はそのズバ抜けたシュート力を見せ付けていたものの前節終了時点で自身が出場した試合では公式戦7試合ゴールなし。その間、パトリックの得点を絶妙なパスでお膳立てするなど一定の存在感は見せていたが、G大阪のエースを名乗る男にしては不満なパフォーマンスが続いていた。
「苦しんでいるとは思うが、自分で乗り越えるしかない。こういう状況で結果を出せば彼も本物になれる」とその才能を認めるがゆえに、あえて突き放す姿勢を見せてきた長谷川監督だったが、天皇杯準決勝・清水戦ではややラッキーだった先制点に続いて、背番号39ならではのセンスが凝縮したチーム4点目も奪った。奇しくも7月のJ1第17節・神戸戦(5○1)以来となる1試合2得点で、精神的な負のサイクルに自らピリオドを打った。
「自分が点を取れなくてもチームが勝てばいい」と表向きは殊勝な言葉を残し続けていた宇佐美だったが、ひさびさにネットを揺らした天皇杯準決勝で覚えたのは快感ではなく…