生と死の立場を一瞬にして変える、あまりにも劇的な後半ロスタイムの決勝ゴール。その主役は誰も予想しなかったGK山岸だった。
石川のCKがストーン役・前田の脇のスペースを突いてくるのは練習からの狙いどおりだった。敵陣ゴール前まで上がった185cmの山岸はフィールドプレーヤーを含めても最長身。本人は「決めてやる」とゴールへの意欲をあらわにしたわけでも、「相手のマークを一人でも引き付けられれば」と控えめに陣取っていたわけでもない。「とにかくスラしてコースを変えれば中で何かが起きると思った」とヘディングで触ることだけを考えていた。そのボールは、間近で目撃した山田が「触った瞬間に入るなという感じだった」というほど、昇格争いの殺伐とした空気には似合わない実に軽やかな軌道を描いてゴールに吸い込まれていった。
この劇的なラストへの伏線を張ったのも山岸だった。
10分に山崎のシュートを反応良くセーブすると、その後もシュートストップやスルーパスへの飛び出しで次々にピンチの芽を摘んでいった。「とにかく先制されたくなかった。相手の攻撃の圧力が強くても後ろで踏ん張ろうという話はしていた」。21分にも宮崎のシュートをはじき、こぼれ球に反応した前田、山崎の至近距離のシュートを体を張ってはね返した。先制ゴールはこのビッグセーブの5分後に生まれている。
「昭和の男だよ…