「切り替えの速さと走ること。それだけです」
大分の柳田監督は試合後の会見で就任以降、何を選手たちに強く伝えてきたのかと問われると、シンプルにそう答えた。
この試合で大分が挙げた2得点は、いずれも東京Vのクリアミスがきっかけであり、運が味方した面も少なからずあった。ただ、試合全体で柳田監督が伝えてきた2点を実践できたことは、14戦ぶりの勝利を得るための欠かせない要素だっただろう。
大分は90分をとおして、守備では高い集中力とボールホルダーへの厳しいアプローチ、攻撃では奪ったあとの素早く厚みのあるカウンターを継続。そうしたプレーのベースになったのが、運動量と攻守の切り替えの速さだ。特に先制以降は、相手が前掛かりになり押し込まれる時間帯が続いても、「耐えながら自分たちがここというシーンで前に出るというのは、常にあった」と為田。引くだけではなく前に出て行く姿勢を失わないことで、ディフェンスラインを整える時間を生みつつ、東京Vの勢いを削いでいった。試合終了を告げる笛が鳴ると、大分の選手は何人もピッチに座り込む。その姿が、これまでの苦しみと勝利の価値の大きさを表していた。(石原 遼一)…