どこか、10年以上前の両国の対決を見ているかのようであった。
いざ、日本のマイボールになれば、「速く攻めなければ」と急ぐあまりにミスを繰り返す。試合巧者のカナリア軍団はそのスキをカウンターで突き、次々と日本のゴールを陥れる―。少しは日本サッカーも成長したという手ごたえを得たかったが、目の前で繰り広げられたのは、そんな過去に見た光景と同じだった。
まるで砂場のようなシンガポールのピッチが、日本の選手たちの足元を狂わせたのは間違いない。ただ、劣悪な状況でも堂々とプレーするブラジルの選手たちは、何も自慢のテクニックだけで局面を切り抜けていったわけではなかった。
経験。この試合のブラジルと日本のメンバーでは、その差が大き過ぎた。ただでさえ両国の実力差があることは当然の事実。にもかかわらず、日本の先発メンバー表にはほぼ代表経験がない選手の名前が8人も並んでいた。「相手を恐れて縮こまってプレーしても、自分たちの本当の実力は測れない」。そう語っていたのは、この日自身初めてとなるブラジル戦で、終始堂々とプレーした森重真人。彼を含めて…