歴史に残る逆転劇でG大阪がクラプ2度目の優勝を勝ち獲ったナビスコカップ――。かつて国内とアジアの全冠を手にしてきたクラプにとっては、常勝軍団としての復権を宣言するタイトルの一つに過ぎないのかもしれないが、「シルバーコレクター」と揶揄されてきた指揮官にとっては、悲願のビッグタイトル獲得だった。「いつもグッドルーザーにならなきゃと思って優勝チームを下から見上げてばかりだったので...」。優勝後の会見で、思わずこんな本音を漏らしたとおり、長谷川監督は大舞台で苦渋を舐め続けてきた。
05年から5年間指揮した清水時代には天皇杯で2度、ナビスコカップで1度準優勝に終わっている。昨季、J2では監督として初めて“優勝”の肩書きを手にしているものの、長谷川監督が目指したのはあくまでもJ1におけるビッグタイトルの獲得だった。監督のキャリアだけを見れば、確かに決勝の壁にはじき返され続けてきたのは事実だろう。ただ、サッカー王国・清水に生まれ育ってきた男は、実は栄冠に満ちたサッカー人生を歩んできた。
ナビスコカップの決勝を数日後に控え、シルバーコレクターとしての過去を問われた指揮官は「意外とね。優勝してるんですよ」と清水FCに所属していた小学校時代から、すべてのカテゴリーにおいて常に何らかの栄冠を獲得してきた自身のキャリアに胸を張った。自らには“勝者のメンタリティー”が備わっていると言い聞かせんばかりに。
エリート街道を歩んできた清水育ちの男にとって、唯一欠けていた監督としてのビッグタイトルを懸けた大一番。35分にして2点の先行を許す苦しい展開にいつもポジティブな長谷川監督も思わず「持ってねえなあ。厳しいゲームだな」とほんの少しだけ弱気の虫が頭をもたげたという。
ただ、パトリックの追撃弾で1点差として迎えたハーフタイム。長谷川監督はその布陣変更と、選手起用に自らの覚悟を…