やられてはいけない男に、またしても決められた。豪州のエース、ティム・ケイヒルは語る。「いくらマークされても、正しい形でボールが来てそこにうまく合わせればゴールは決められる。4万人の観衆の目の前でゴールを決めたことで、その場が一瞬シーンとなる。あの瞬間は何物にも代えがたい」。
同じ瞬間、吉田麻也は両手を振り下ろして真っ先に怒りを示していた。そして試合後、記者の前に立つ表情もいつもより硬かった。失点の場面に質問が飛ぶ。より顔つきは険しくなった。
「もったいない失点。ケイヒルがファーに逃げる動きはミーティングでも言われていたこと。簡単にクロスを上げさせてもいけなかった。まあ、もうそのことは(選手同士で)話したので」。憮然としたままだった。
あの場面、クロスを上げた選手はフリーの状態だった。中央にいた森重真人は、半身の状態で初めはケイヒルを視野に入れていたが、ボールが蹴られる瞬間に背後を狙われ、そのままクロスに飛び込まれた。左SBの太田宏介も中への絞りが間に合わなかった。
酒井高徳が吉田との会話の一端を明かした…