試合前に注がれた「ムトウ! トーキョー!!」のコール
寒空に覆われた平塚のピッチが、後半になって一気に熱を帯びていった。両チームの指揮官が主審に抗議の意志を激しく表し、監督同士もお互いをけん制し合う。選手同士も球際での肉弾戦が続き、レフェリーが笛を吹く回数は増えていく。前半のスコアは一進一退の0-0だったが、試合が動くのも時間の問題と思われた。
何と言っても、この試合の最注目選手は彼しかいなかった。イングランド・プレミアリーグの名門チェルシーから獲得オファーを受けている武藤嘉紀。試合前、ピッチに登場した若きエースにサポーター席から注がれた声援は「ムトウ! トーキョー!!」。彼がどんな決断を下しても、目の前にいる武藤はいまはFC東京の選手に変わりない。
もちろん武藤自身も、その一心でこの試合に臨んでいた。「とにかくこの状況でも自分が点を取って、FC東京を勝たせたい」。ファンから注がれた大きな声に、…