Feature 特集

本田圭佑、空港での激白/前編

2014/11/14 17:12



新たなスタート
見直す自分と、貫く自分

 9月、10月と4試合あった日本代表戦で、本田圭佑の“変化”を感じ取った人は多かったはずだ。その姿は、絶対的中心として代表チームを引っ張ったこの4年とは異なる。「ゲームメークするよりも、前で脅威になる」。彼の言葉どおり、ミランでは開幕戦からゴールをコンスタントに決め続け、名だたる世界的選手たちと肩を並べてセリエAの得点ランキング争いに身を置いてきた。自らのアイデンティティーを押し出すことで周囲を引っ張ったこれまでとは違う、新たな本田。その境地に至るまでの経緯や、隠された意図は何なのか。11月9日、ミランの空港、搭乗口近くのカフェで静かに彼は語り始めた。(西川 結城)

ミラノ、2度目の冬

 ここ1週間のミラノは、陽が差すことがほとんどなかった。雨雲と夜霧に包まれた、北イタリア特有の天候。徐々に気温も下がり、もうすぐこの地に本格的な冬がやってくることを予感させた。

 冬の到来。そう、本田圭佑がこの地に来て、もうすぐ1年が経とうとしている。

 現在、4試合勝利なしのミラン。シーズン当初は好スタートを切っていたが、フィリッポ・インザーギ新監督率いるロッソネロは、ここに来て足踏みをしている。 

 順調に得点を重ねてきた本田もその4試合でゴールなし。8日(現地時間)に行われたサンプドリア戦後の各新聞の平均採点も、5点台と低調なモノだった。地元記者も“そんなに甘かねえ”と言わんばかりに、結果主義の姿勢を示していた。

 サンプドリア戦翌日の早朝、ミラノ・マルペンサ国際空港。チェックインゲートに姿を現した本田は、ワインレッドのスーツに身を包んでいた。フォーマルな装いは、いまやミラノの人にも彼の定番として知られている。

 サングラスを外すことなく、セキュリティゲートの列に並ぶ。こちらの他愛もない会話には反応するが、「サッカーの話はここではせえへんよ」と初めはいつもの態度だった。

 搭乗ゲートまで歩いて行くと、その横にはカフェがあった。すると「ジャーナリストとお茶することなんて、なかなかない」と呟きながらも、店へと入っていく。エスプレッソとミネラルウォーターを注文し、席へ着いた。

 閑散とした空間。搭乗の時間まではまだ40〜50分ある。カフェにはゆったりとした空気が流れていた。自然と、会話は始まっていった。

ミランが抱える病巣

“ミランの10番”。そう、もてはやされたのが今年の1月だった。80年代から90年代にかけて、世界最高峰のリーグとして君臨したイタリア・セリエA。その主役としてサッカー界を席巻していたのが、この赤と黒の集団だ。

 残念ながら、いまの姿は当時のそれとは比べ物にならない。とはいえイタリアに来るたびに感じるのは、いまだに『ミランブランド』が確かにあるということ。オーナーである元首相のシルビオ・ベルルスコーニの存在感は依然大きく、ユベントスとミランの二大クラブはいつの時代も“グランデ(偉大)”なのだ。

 ただし、ユベントスはここ数年も強さを誇っているのに対して、ミランは輝かしい過去にすがっている。そんな印象はどうしても拭えない。

 今季、カカとバロテッリという看板選手二人がチームを去った。監督も代わり、ミランはまた新たなサイクルに入ろうとしている。いまのセリエAはユベントス、ローマ、ナポリなど、ミランより地力を付けているチームが多くいるのが現状だ。つまり、言ってみればミランはチャレンジャーの立場。しかし、過去の自分たちが足かせとなり、挑戦者精神に歯止めをかけている。

 まだ加入して1年も経っていない本田だが、ミランが抱える病巣をズバリ突いた…

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